奈良県 ・ 世尊寺 「微笑みの阿弥陀の巻」
仏像拝観に行く時間が取れない。。。
テンションだだ下がりで日々過ごしております。
てことで昨年にお参りした奈良県吉野の世尊寺のお話。
世尊寺は31代用明天皇2年(587年)勅願により、聖徳太子が建立された寺院であり、聖徳太子霊場 第7番の霊場 。
創建時は比蘇寺と呼ばれ、飛鳥寺、四天王寺、法隆寺と共に四大寺院の一つに数えられる大寺院でしたが、平安末期から鎌倉、室町にかけての武家政治の台頭とによる社会情勢の激変と、吉野という僻地であったことから荒廃の一途を辿る。
比蘇寺、吉野寺、現光寺、栗天奉寺、世尊寺と寺名が5度も変わることからもその興隆と衰亡を物語ります。
お寺への入り口となる山門をくぐり抜けようとすると頭上に邪鬼が。
グシャリとなりながらも支えてます(笑)
非常に愛嬌のあるお顔で左甚五郎の作となります。
山門をくぐり中門を抜けると本堂へ。
予約の旨を伝え、ご住職に招かれながら本堂へ上がらせて頂くと本堂には阿弥陀如来坐像と十一面観音菩薩立像が。



ご住職からお寺の栄枯盛衰の歴史や仏像に関する逸話などを非常に興味深く聞かせて頂きました。
阿弥陀如来、十一面観音菩薩は共に光芒を放つ像とのことでその逸話はなかなかに興味深く、なかでも阿弥陀如来は「日本書紀」第十九の巻に造仏の逸話が登場し日本最古との伝承をもつに至ります。
【欽明天皇十四年(553)「夏五月、茅渟の海(大阪湾)の海中に、雷のような音を出して、光輝くものがある。天皇はあやしんで臣の溝辺直に命じて海上を探させると、クスの大木の輝くのを発見した。天皇は感じて仏師に仏像二躯を造らせた。今、吉野寺に光を放つ樟木の像なり」とあります。 】
この逸話によればご本尊の阿弥陀如来坐像は6世紀の作となり日本最古の阿弥陀となるのでしょうか。
善光寺に最古の阿弥陀がいらっしゃいますがあちらは552年に百済より日本んに伝来したとのことですので日本最古とはまた違うのでしょう。
しかし現存最古の仏像と言われる飛鳥寺の釈迦如来坐像(609年)よりも古いとなると。。
ここ手の逸話の信憑性はどこまでを信じるのかはそれぞれでしょうけど、このお寺に居る間は本気で日本最古と信じながら見仏いたしました。
その方が浪漫がありますよね。 実際には藤原時代の作ではないかとのことです。
さて、その阿弥陀如来坐像ですが像高145cm、クスの木の一木造り。
お姿は飛鳥大仏に良く似てらっしゃる尊様で面長のなで肩、耳が長く垂れ下がります。
「微笑みの阿弥陀」と呼ばれるそのお顔はふくよかで優しい笑みをたたえたお顔。 目尻を下げ口の広角を上げた本当に優しい微笑みです。
吸い込まれる笑顔とはまさにこの方の笑顔でしょう。仏の慈悲深い素晴らしいお顔です。
また、衣紋の彫りも優しく なだらかに流れていきます。 結跏趺坐した足元へ水面の波紋のように広がる流れは美しいです。

本堂左側には奈良時代作の十一面観音立像を中心に役行者像、僧形文殊像、阿弥陀如来坐像などが並んでいます。
県指定文化財となる十一面観音ですがこちらの像にも逸話が。
【「日本書紀」や「聖徳太子伝暦」によると、『推古天皇三年(595)三月、土佐の南海に夜な夜な大いなる光があり、翌四月に淡路島に長さ八尺、太さ一抱えもある大木が漂着した。これを拾った漁師が薪と一緒にかまどに焼くと、すばらしい芳香を放ったので都へ献上してきた。
これを見た太子は、「この木は天竺国の南海の岸に自生する栴壇という香木からできた沈水香という霊木です。陛下が仏教を興隆しようとされているのに感応して、釈迦・梵天がはるばる送られてきたのでしょう。」と天皇に奏上した。そこで天皇はこの香木で百済の工に観音像を彫らせ、吉野の比蘇寺に祀った。この像はときどき光を放った』と、記されています。】
この逸話から本十一面観音菩薩像が壇像として造仏されたことがわかります。
吉野地方最古の木彫像。像高218cm 一木造り。 頭頂の面や左手先は鎌倉時代の後補。
肩から流れ落ちる天衣、両の腕に絡み落ちる天衣や足元の波打つような衣紋の造形はまさしく壇像風で素晴らしい十一面観音立像です。
惜しむらくは和室の一室のような場所に立つのではなくきちんとした厨子ないしはお堂に安置されていて欲しいです。
背景によって随分と魅力落ちしてしまっているような。。
間近での拝観が可能で有難いのですが。。素晴らしい方であるばかりに、このような場所にいるべきではないとの思いが強くなりました。。

境内には県指定の有形文化財に指定された太子堂や芭蕉の句碑、石塔十三重塔に、150年ほど前の台風で倒れたものの、根元から再び幹が伸びて見事に蘇生。このため「不老長寿の桜」と呼ばれている聖徳太子お手植えと伝わる「壇上桜」など見所がたくさんでした。


世尊寺
奈良県吉野郡大淀町比曽762
TEL : 0746-32-5976
HP : http://web1.kcn.jp/sesonzi/

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テンションだだ下がりで日々過ごしております。
てことで昨年にお参りした奈良県吉野の世尊寺のお話。
世尊寺は31代用明天皇2年(587年)勅願により、聖徳太子が建立された寺院であり、聖徳太子霊場 第7番の霊場 。
創建時は比蘇寺と呼ばれ、飛鳥寺、四天王寺、法隆寺と共に四大寺院の一つに数えられる大寺院でしたが、平安末期から鎌倉、室町にかけての武家政治の台頭とによる社会情勢の激変と、吉野という僻地であったことから荒廃の一途を辿る。
比蘇寺、吉野寺、現光寺、栗天奉寺、世尊寺と寺名が5度も変わることからもその興隆と衰亡を物語ります。
お寺への入り口となる山門をくぐり抜けようとすると頭上に邪鬼が。
グシャリとなりながらも支えてます(笑)
非常に愛嬌のあるお顔で左甚五郎の作となります。
山門をくぐり中門を抜けると本堂へ。
予約の旨を伝え、ご住職に招かれながら本堂へ上がらせて頂くと本堂には阿弥陀如来坐像と十一面観音菩薩立像が。



ご住職からお寺の栄枯盛衰の歴史や仏像に関する逸話などを非常に興味深く聞かせて頂きました。
阿弥陀如来、十一面観音菩薩は共に光芒を放つ像とのことでその逸話はなかなかに興味深く、なかでも阿弥陀如来は「日本書紀」第十九の巻に造仏の逸話が登場し日本最古との伝承をもつに至ります。
【欽明天皇十四年(553)「夏五月、茅渟の海(大阪湾)の海中に、雷のような音を出して、光輝くものがある。天皇はあやしんで臣の溝辺直に命じて海上を探させると、クスの大木の輝くのを発見した。天皇は感じて仏師に仏像二躯を造らせた。今、吉野寺に光を放つ樟木の像なり」とあります。 】
この逸話によればご本尊の阿弥陀如来坐像は6世紀の作となり日本最古の阿弥陀となるのでしょうか。
善光寺に最古の阿弥陀がいらっしゃいますがあちらは552年に百済より日本んに伝来したとのことですので日本最古とはまた違うのでしょう。
しかし現存最古の仏像と言われる飛鳥寺の釈迦如来坐像(609年)よりも古いとなると。。
ここ手の逸話の信憑性はどこまでを信じるのかはそれぞれでしょうけど、このお寺に居る間は本気で日本最古と信じながら見仏いたしました。
その方が浪漫がありますよね。 実際には藤原時代の作ではないかとのことです。
さて、その阿弥陀如来坐像ですが像高145cm、クスの木の一木造り。
お姿は飛鳥大仏に良く似てらっしゃる尊様で面長のなで肩、耳が長く垂れ下がります。
「微笑みの阿弥陀」と呼ばれるそのお顔はふくよかで優しい笑みをたたえたお顔。 目尻を下げ口の広角を上げた本当に優しい微笑みです。
吸い込まれる笑顔とはまさにこの方の笑顔でしょう。仏の慈悲深い素晴らしいお顔です。
また、衣紋の彫りも優しく なだらかに流れていきます。 結跏趺坐した足元へ水面の波紋のように広がる流れは美しいです。

本堂左側には奈良時代作の十一面観音立像を中心に役行者像、僧形文殊像、阿弥陀如来坐像などが並んでいます。
県指定文化財となる十一面観音ですがこちらの像にも逸話が。
【「日本書紀」や「聖徳太子伝暦」によると、『推古天皇三年(595)三月、土佐の南海に夜な夜な大いなる光があり、翌四月に淡路島に長さ八尺、太さ一抱えもある大木が漂着した。これを拾った漁師が薪と一緒にかまどに焼くと、すばらしい芳香を放ったので都へ献上してきた。
これを見た太子は、「この木は天竺国の南海の岸に自生する栴壇という香木からできた沈水香という霊木です。陛下が仏教を興隆しようとされているのに感応して、釈迦・梵天がはるばる送られてきたのでしょう。」と天皇に奏上した。そこで天皇はこの香木で百済の工に観音像を彫らせ、吉野の比蘇寺に祀った。この像はときどき光を放った』と、記されています。】
この逸話から本十一面観音菩薩像が壇像として造仏されたことがわかります。
吉野地方最古の木彫像。像高218cm 一木造り。 頭頂の面や左手先は鎌倉時代の後補。
肩から流れ落ちる天衣、両の腕に絡み落ちる天衣や足元の波打つような衣紋の造形はまさしく壇像風で素晴らしい十一面観音立像です。
惜しむらくは和室の一室のような場所に立つのではなくきちんとした厨子ないしはお堂に安置されていて欲しいです。
背景によって随分と魅力落ちしてしまっているような。。
間近での拝観が可能で有難いのですが。。素晴らしい方であるばかりに、このような場所にいるべきではないとの思いが強くなりました。。

境内には県指定の有形文化財に指定された太子堂や芭蕉の句碑、石塔十三重塔に、150年ほど前の台風で倒れたものの、根元から再び幹が伸びて見事に蘇生。このため「不老長寿の桜」と呼ばれている聖徳太子お手植えと伝わる「壇上桜」など見所がたくさんでした。


世尊寺
奈良県吉野郡大淀町比曽762
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