奈良県・福源寺「平安の在銘像 定朝様薬師如来と異相の観音菩薩像の巻」
吉野町より延びる国道169号線を川上村へ向かい、川上村役場を超え湯盛温泉 杉の湯を超えトンネル手前を左折し南下すると見えてくるのが福源寺。
白鳳時代の役行者開基と伝えられ、建久元年(1190年)仁西上人が天台宗寺院として中興、お告げにより薬師如来と共に高原の里人と、有馬温泉の再興に尽力。
十二神将を表し、有馬十二坊を建て湯を守りしめたと伝えられており、その後、仁西上人は薬師如来と共に再び高原に遷り、寛文10年(1670)、曹洞宗へと改め現在に至ります。

本堂
こちらで拝観させていただけるのが重要文化財に指定された薬師如来坐像。
平安時代の在銘像として知られ、像内には応徳2年(1085年)11月仏師僧勝禅大法師との墨書銘、元禄8年(1695年)修理の際には台座に「元有馬薬師之蓮台」と記されています。
この薬師如来像は同じく平安時代の天部像と共に収蔵庫に安置されています。
本堂を抜け、収蔵庫へと向かいます。
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薬師如来を安置する収蔵庫

薬師如来 由緒書き

収蔵庫内
ご住職に収蔵庫の扉を開いていただくと、非常に美しい薬師如来像が目に飛び込んできます。
平安時代後期、藤原時代の定朝様を魅せる薬師如来像で、なだらかな肩と全体的に丸みを感じる体躯、大きめでつぶらな瞳と小さく結んだ唇に優しさと美しさを感じるのでした。
衣紋の表現は薄彫りで簡易的、柔らかな全体像と非常に合いますね。
穏やかで優しさを感じる定朝様の仏様ですが一木造り。
一木造りの薬師像は非常に重厚で独特の雰囲気を感じる像が多かったのでここはすごく意外でした。
もともとこの像は神仏分離令が吹き荒れた明治時代に、安楽寺薬師堂から福源寺に移され今日に至っています。
胎内には『藤原宗高大施主。仏師僧勝禅大法師。応徳二年(1085)十一月日」との墨書が見つかっており、台座と光背は、江戸時代元禄八年(1695)と記されています。
十二神将像が装飾された光背は見応えがありますね。

薬師如来坐像 県指定文化財 カヤ材 一木造り 像高126.5cm 平安時代後期

愛らしくも感じる瞳と唇の可愛らしさ
薬師像の脇には同じく平安期の天部像。
動きには固さがあり窮屈さを感じる造形ながらも、力強い尊容で重さを感じます。
こういったが天部像はカッコ良くて個人的には非常に好みの像です。
阿吽で対をなし、静と動をその造形から感じることが出来ました。

吽形天部像 村指定文化財 ヒノキ材 一木造り 平安時代 像高107.4cm
大人しさを感じる吽形像の天部

阿形天部像 村指定文化財 ヒノキ材 一木造り 平安時代 像高105.9cm
比べて動きがある阿形像の天部
収蔵庫を拝観させていただいた次は本堂へと戻り、本堂内の仏様を案内していただきます。
本堂へ戻って最初に目に入るのは、右脇というより右裏手の諸佛。
文化財的には無指定ですがそれぞれ妖しく美しい。
如意輪観音というのは、その思惟する姿からも妖しさを感じることが多い。
堂々とゆったりと坐しながら思惟し、高貴な雰囲気を感じさせ異国的に感じる美しい如意輪観音。
全体的に破損が進みながらも量感たっぷりの脚部からそこに乗る上半身の衣はどういった表現だったのか気になる菩薩坐像。
驚くほど長い指をした左手の印相や、摩滅して想像するしかない衣紋がより興味をかき立てますね。

優雅に坐す美しい如意輪観音坐像

破損が目立つも随所に興味を持たせる菩薩坐像

如来系の破損佛 頭部が大きく古仏を思わせる
本堂の左脇には鎌倉期とされる観音菩薩坐像と同じく鎌倉時代の二天部像がいらっしゃいます。
がっしりとした大きな肩幅に力強い体躯、太い下半身に切れ長で吊り目の鋭い双眸を持つ非常に男性的で威光ある方です。
平安初期中期の尊容と鎌倉期の体躯のような、平安と鎌倉の特徴が融合した観音菩薩像は見応えがあり、この日めぐる最後のお寺ということもありかなり多くの時間この像の前で過ごしました。
また、脇にいらっしゃる天部像は遠目にも躍動感を感じる鎌倉佛で、近寄ると寄木の継ぎ目が目立ち ぎこちなさを感じる面もありますが、非常に優れた天部像。
大仰にも感じるほどに動きを出した腕の衣や、立ち姿は勇ましく力強く、厳しい尊容の観音像の脇侍としてよく合うように思われました。

本堂左脇壇

鎌倉時代の三尊像

観音菩薩坐像 村指定文化財 ヒノキ材 寄木造り 鎌倉時代 像高98.5cm

非常に鋭い双眸を持つ尊容

阿形天部像 村指定文化財 ヒノキ材 寄木造り 鎌倉時代 像高108cm

吽形天部像 村指定文化財 ヒノキ材 寄木造り 鎌倉時代 像高108cm
ご本尊は福源寺で最も古いとされる平安の釈迦如来坐像。
高い須弥壇にいらっしゃるため、脚部は見えづらいですが太い胸板と瞑想するようなお顔が確認できます。
ふくれたような頬に小さな口が乗り、静かに瞑想する瞳で穏やかなような厳しいような不思議なお顔に見えました。
下から仰ぎ見る拝し方になるので厳しいようにも見えたのか。
下半身や衣紋はなかなか見えないので全体像としては太くてどっしりといった印象でした。

本堂内陣 須弥壇

須弥壇上のご本尊

釈迦如来坐像 村指定文化財 ヒノキ材 寄木造り 平安時代 像高48.1cm

福源寺 由緒書き
平安時代から鎌倉時代、数多くの文化財を有し見所の尽きない福源寺。
お告げにより有馬の地へ出向かれ再興を果たし戻られたという伝承を持つ、厚い信仰を受ける薬師如来坐像。
奈良県南部をお参りするときは必ず訪れた欲しいお寺です。
参考にさせて頂きました
福源寺 公式HP
川上村役場
福源寺(ふくげんじ)
奈良県吉野郡川上村大字高原902
TEL : 0746-52-0104
宗派 : 曹洞宗
御本尊 : 釈迦如来
拝観 : 要予約
拝観料 : 志納
駐車場 : 有り

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白鳳時代の役行者開基と伝えられ、建久元年(1190年)仁西上人が天台宗寺院として中興、お告げにより薬師如来と共に高原の里人と、有馬温泉の再興に尽力。
十二神将を表し、有馬十二坊を建て湯を守りしめたと伝えられており、その後、仁西上人は薬師如来と共に再び高原に遷り、寛文10年(1670)、曹洞宗へと改め現在に至ります。

本堂
こちらで拝観させていただけるのが重要文化財に指定された薬師如来坐像。
平安時代の在銘像として知られ、像内には応徳2年(1085年)11月仏師僧勝禅大法師との墨書銘、元禄8年(1695年)修理の際には台座に「元有馬薬師之蓮台」と記されています。
この薬師如来像は同じく平安時代の天部像と共に収蔵庫に安置されています。
本堂を抜け、収蔵庫へと向かいます。
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薬師如来を安置する収蔵庫

薬師如来 由緒書き

収蔵庫内
ご住職に収蔵庫の扉を開いていただくと、非常に美しい薬師如来像が目に飛び込んできます。
平安時代後期、藤原時代の定朝様を魅せる薬師如来像で、なだらかな肩と全体的に丸みを感じる体躯、大きめでつぶらな瞳と小さく結んだ唇に優しさと美しさを感じるのでした。
衣紋の表現は薄彫りで簡易的、柔らかな全体像と非常に合いますね。
穏やかで優しさを感じる定朝様の仏様ですが一木造り。
一木造りの薬師像は非常に重厚で独特の雰囲気を感じる像が多かったのでここはすごく意外でした。
もともとこの像は神仏分離令が吹き荒れた明治時代に、安楽寺薬師堂から福源寺に移され今日に至っています。
胎内には『藤原宗高大施主。仏師僧勝禅大法師。応徳二年(1085)十一月日」との墨書が見つかっており、台座と光背は、江戸時代元禄八年(1695)と記されています。
十二神将像が装飾された光背は見応えがありますね。

薬師如来坐像 県指定文化財 カヤ材 一木造り 像高126.5cm 平安時代後期

愛らしくも感じる瞳と唇の可愛らしさ
薬師像の脇には同じく平安期の天部像。
動きには固さがあり窮屈さを感じる造形ながらも、力強い尊容で重さを感じます。
こういったが天部像はカッコ良くて個人的には非常に好みの像です。
阿吽で対をなし、静と動をその造形から感じることが出来ました。

吽形天部像 村指定文化財 ヒノキ材 一木造り 平安時代 像高107.4cm
大人しさを感じる吽形像の天部

阿形天部像 村指定文化財 ヒノキ材 一木造り 平安時代 像高105.9cm
比べて動きがある阿形像の天部
収蔵庫を拝観させていただいた次は本堂へと戻り、本堂内の仏様を案内していただきます。
本堂へ戻って最初に目に入るのは、右脇というより右裏手の諸佛。
文化財的には無指定ですがそれぞれ妖しく美しい。
如意輪観音というのは、その思惟する姿からも妖しさを感じることが多い。
堂々とゆったりと坐しながら思惟し、高貴な雰囲気を感じさせ異国的に感じる美しい如意輪観音。
全体的に破損が進みながらも量感たっぷりの脚部からそこに乗る上半身の衣はどういった表現だったのか気になる菩薩坐像。
驚くほど長い指をした左手の印相や、摩滅して想像するしかない衣紋がより興味をかき立てますね。

優雅に坐す美しい如意輪観音坐像

破損が目立つも随所に興味を持たせる菩薩坐像

如来系の破損佛 頭部が大きく古仏を思わせる
本堂の左脇には鎌倉期とされる観音菩薩坐像と同じく鎌倉時代の二天部像がいらっしゃいます。
がっしりとした大きな肩幅に力強い体躯、太い下半身に切れ長で吊り目の鋭い双眸を持つ非常に男性的で威光ある方です。
平安初期中期の尊容と鎌倉期の体躯のような、平安と鎌倉の特徴が融合した観音菩薩像は見応えがあり、この日めぐる最後のお寺ということもありかなり多くの時間この像の前で過ごしました。
また、脇にいらっしゃる天部像は遠目にも躍動感を感じる鎌倉佛で、近寄ると寄木の継ぎ目が目立ち ぎこちなさを感じる面もありますが、非常に優れた天部像。
大仰にも感じるほどに動きを出した腕の衣や、立ち姿は勇ましく力強く、厳しい尊容の観音像の脇侍としてよく合うように思われました。

本堂左脇壇

鎌倉時代の三尊像

観音菩薩坐像 村指定文化財 ヒノキ材 寄木造り 鎌倉時代 像高98.5cm

非常に鋭い双眸を持つ尊容

阿形天部像 村指定文化財 ヒノキ材 寄木造り 鎌倉時代 像高108cm

吽形天部像 村指定文化財 ヒノキ材 寄木造り 鎌倉時代 像高108cm
ご本尊は福源寺で最も古いとされる平安の釈迦如来坐像。
高い須弥壇にいらっしゃるため、脚部は見えづらいですが太い胸板と瞑想するようなお顔が確認できます。
ふくれたような頬に小さな口が乗り、静かに瞑想する瞳で穏やかなような厳しいような不思議なお顔に見えました。
下から仰ぎ見る拝し方になるので厳しいようにも見えたのか。
下半身や衣紋はなかなか見えないので全体像としては太くてどっしりといった印象でした。

本堂内陣 須弥壇

須弥壇上のご本尊

釈迦如来坐像 村指定文化財 ヒノキ材 寄木造り 平安時代 像高48.1cm

福源寺 由緒書き
平安時代から鎌倉時代、数多くの文化財を有し見所の尽きない福源寺。
お告げにより有馬の地へ出向かれ再興を果たし戻られたという伝承を持つ、厚い信仰を受ける薬師如来坐像。
奈良県南部をお参りするときは必ず訪れた欲しいお寺です。
参考にさせて頂きました
福源寺 公式HP
川上村役場
福源寺(ふくげんじ)
奈良県吉野郡川上村大字高原902
TEL : 0746-52-0104
宗派 : 曹洞宗
御本尊 : 釈迦如来
拝観 : 要予約
拝観料 : 志納
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