兵庫県・達身寺「丹波の里で出会う究極の仏像群の巻き②」
-つづき-
本堂から出た奥の収蔵庫には比較的破損の少ない仏像や、造像途中と思われる仏像など重要文化財に指定されている像を中心に安置されています。
収蔵庫正面には漆箔が施された中尊 阿弥陀如来坐像に脇侍の様に十一面観音坐像、薬師如来座像が。
たっぷり堂々とした量感に非常に薄く簡略化された衣文表現の中、薬師如来座像だけは肩口から胸元には繰り返し折りたたまれる表現や細かな衣文線が施され非常にお洒落。
時代的に違うのか他の寺院の像が集まったのか。この方たちは他の達身寺像に比べてお腹周りの量感がないんですよねぇ。
この辺りは後に触れます。


中尊 阿弥陀如来坐像

脇侍 十一面観音坐像


脇侍 薬師如来坐像

更に脇に安置された地蔵菩薩坐像は肩幅は広くゆったりと坐された方で、切れ長の伏した瞳が非常に慈悲深さを感じさせて下さいます。
じっくりと寄って眺めると切れ長で力強い瞳であることが分かります。
遠目に見る伏した優しげな印象からはまた違った深い強い意志を持った瞳の光を見ることが出来ます。

地蔵菩薩坐像




同じく慈悲深く力強い尊様を示す阿弥陀如来坐像。
同仏師の作かと思える魅力にあふれた阿弥陀如来坐像で平安後期の優しさと威厳が満ち溢れています。
地蔵菩薩坐像とは鼻筋が非常に似通いながらも口元はキュッと結んだ地蔵菩薩と、ゆるく口角を下げた阿弥陀如来とで違いは見て取れますが全体から感じる印象は似ていたように思いました。
非常に優れた仏師の見事な造像だと感じました。

阿弥陀如来坐像



そして、その阿弥陀如来の隣りに坐されているのが薬師如来坐像。
最も心惹かれた像で、体躯的にも尊容にもたっぷりとした量感を持ちどっしりとした安定感を感じさせる像です。
右手首は欠損し体部は全体的に磨滅していますが、膝先などの剥き出しとなった幾重にも重なる年輪の層が、あたかも衣文表現の如く映り非常に美しい。
全体的に見てもその尊容、体躯表現ともに地方の一流の仏師が彫ったであろうことが見て取れます。
この1体が放つ魅力はとてつもないものがあるように感じかなりの時間見入ってしまいました。

薬師如来坐像





力強い表情にゴリゴリと彫り込まれた紋表現を見せる非常に男性的な吉祥天立像。
腕から垂れ落ちる衣の衣紋が深く彫りこまれ見事。
眉を吊り上げてにらみつける様に見据える目線、力強く結んだ唇からも非常に男性的で、ともすれば憤怒相のようにも見えてくる吉祥天像でした。

吉祥天立像


抜群の色気を持った2体の聖観音菩薩立像。
見事なS字ラインを描く腰つきの艶めかしさは素晴らしく、その腰から延びる太い下半身がより力強く感じさせる。
尊容は大きな鼻に強く結んだ口元と非常に男性的ですが、この腰つきで非常に柔らかい印象を受け、力強さと優しさを感じますね。
もう一方は腰の捻りは抑えられていますが、量感を持った下半身は共通で尊容も非常に良く似ています。
薬師如来とも共通する尊様ですね。
非常に右手が長く、こちらも力強さと優しさを兼ね備えているように感じました。

抜群のS字ラインを見せる聖観音菩薩立像




力強く腕の長い菩薩立像


他に3体並ぶ十一面観音立像は大きさや尊容に違いこそあれ、全体を通しての造形は非常に似通っており同工房で造像されたことを伺わせます。
衣文表現も非常に似ているのですが、何と言っても目を引くのはポッコリと突き出した腹部。
他に並ぶ聖観音菩薩立像や、兜跋毘沙門天像、先程紹介した薬師如来坐像などにも共通しており、いわゆる”達身寺様”よ呼ばれる造形です。







達身寺は、元々仏師の工房があったのではないか?とも考えられています。
その理由に、本尊仏となるべきクラスの仏像が複数存在すること、1寺に1体祀ればよいとされる兜跋毘沙門天像が16体も存在すること、造像途中の未完の仏像がある事、そして共通する達身寺様の造形が見られること。
そのような事から、達身寺は「木彫仏の原郷」とも呼ばれています。
地佛的な尊様にポッコリと突き出したお腹。見事すぎてたまらないものがありますね。
達身寺様の腹部群








本堂の脇にも素晴らしい破損仏が安置されています。
如来形立像に兜跋毘沙門天像。
かなりの破損と磨滅具合ではありますが、はっきりと達身寺様が見て取れる造形。
平安初期頃のタップリとした量感や力強さが感じれます。





本堂、本堂裏収蔵庫、奥収蔵庫と80体の仏像が安置され、そのどれもが心に訴えかけてくる魅力を持っています。
美しく、力強く、慈悲深く儚い、おおよそ安置されている仏像のほとんどが”欠け仏”と呼ばれる破損仏ですが、素晴らしい仏像は朽ち方も素晴らしい。
いや、美しい朽ち方をしているから素晴らしく思うのか、うまく言葉では表せない魅力が達身寺の仏像群には溢れています。






※仏像の写真は今回特別に許可を頂き撮影させて頂きました。
通常は撮影禁止となっておりますのでご注意ください。
十九山 達身寺(たつしんじ)
兵庫県丹波市清住259
TEL : 0795-82-0762
拝観 : 9:00~16:00
拝観料 : 400円
駐車場 : 有り

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本堂から出た奥の収蔵庫には比較的破損の少ない仏像や、造像途中と思われる仏像など重要文化財に指定されている像を中心に安置されています。
収蔵庫正面には漆箔が施された中尊 阿弥陀如来坐像に脇侍の様に十一面観音坐像、薬師如来座像が。
たっぷり堂々とした量感に非常に薄く簡略化された衣文表現の中、薬師如来座像だけは肩口から胸元には繰り返し折りたたまれる表現や細かな衣文線が施され非常にお洒落。
時代的に違うのか他の寺院の像が集まったのか。この方たちは他の達身寺像に比べてお腹周りの量感がないんですよねぇ。
この辺りは後に触れます。


中尊 阿弥陀如来坐像

脇侍 十一面観音坐像


脇侍 薬師如来坐像

更に脇に安置された地蔵菩薩坐像は肩幅は広くゆったりと坐された方で、切れ長の伏した瞳が非常に慈悲深さを感じさせて下さいます。
じっくりと寄って眺めると切れ長で力強い瞳であることが分かります。
遠目に見る伏した優しげな印象からはまた違った深い強い意志を持った瞳の光を見ることが出来ます。

地蔵菩薩坐像




同じく慈悲深く力強い尊様を示す阿弥陀如来坐像。
同仏師の作かと思える魅力にあふれた阿弥陀如来坐像で平安後期の優しさと威厳が満ち溢れています。
地蔵菩薩坐像とは鼻筋が非常に似通いながらも口元はキュッと結んだ地蔵菩薩と、ゆるく口角を下げた阿弥陀如来とで違いは見て取れますが全体から感じる印象は似ていたように思いました。
非常に優れた仏師の見事な造像だと感じました。

阿弥陀如来坐像



そして、その阿弥陀如来の隣りに坐されているのが薬師如来坐像。
最も心惹かれた像で、体躯的にも尊容にもたっぷりとした量感を持ちどっしりとした安定感を感じさせる像です。
右手首は欠損し体部は全体的に磨滅していますが、膝先などの剥き出しとなった幾重にも重なる年輪の層が、あたかも衣文表現の如く映り非常に美しい。
全体的に見てもその尊容、体躯表現ともに地方の一流の仏師が彫ったであろうことが見て取れます。
この1体が放つ魅力はとてつもないものがあるように感じかなりの時間見入ってしまいました。

薬師如来坐像





力強い表情にゴリゴリと彫り込まれた紋表現を見せる非常に男性的な吉祥天立像。
腕から垂れ落ちる衣の衣紋が深く彫りこまれ見事。
眉を吊り上げてにらみつける様に見据える目線、力強く結んだ唇からも非常に男性的で、ともすれば憤怒相のようにも見えてくる吉祥天像でした。

吉祥天立像


抜群の色気を持った2体の聖観音菩薩立像。
見事なS字ラインを描く腰つきの艶めかしさは素晴らしく、その腰から延びる太い下半身がより力強く感じさせる。
尊容は大きな鼻に強く結んだ口元と非常に男性的ですが、この腰つきで非常に柔らかい印象を受け、力強さと優しさを感じますね。
もう一方は腰の捻りは抑えられていますが、量感を持った下半身は共通で尊容も非常に良く似ています。
薬師如来とも共通する尊様ですね。
非常に右手が長く、こちらも力強さと優しさを兼ね備えているように感じました。

抜群のS字ラインを見せる聖観音菩薩立像




力強く腕の長い菩薩立像


他に3体並ぶ十一面観音立像は大きさや尊容に違いこそあれ、全体を通しての造形は非常に似通っており同工房で造像されたことを伺わせます。
衣文表現も非常に似ているのですが、何と言っても目を引くのはポッコリと突き出した腹部。
他に並ぶ聖観音菩薩立像や、兜跋毘沙門天像、先程紹介した薬師如来坐像などにも共通しており、いわゆる”達身寺様”よ呼ばれる造形です。







達身寺は、元々仏師の工房があったのではないか?とも考えられています。
その理由に、本尊仏となるべきクラスの仏像が複数存在すること、1寺に1体祀ればよいとされる兜跋毘沙門天像が16体も存在すること、造像途中の未完の仏像がある事、そして共通する達身寺様の造形が見られること。
そのような事から、達身寺は「木彫仏の原郷」とも呼ばれています。
地佛的な尊様にポッコリと突き出したお腹。見事すぎてたまらないものがありますね。
達身寺様の腹部群








本堂の脇にも素晴らしい破損仏が安置されています。
如来形立像に兜跋毘沙門天像。
かなりの破損と磨滅具合ではありますが、はっきりと達身寺様が見て取れる造形。
平安初期頃のタップリとした量感や力強さが感じれます。





本堂、本堂裏収蔵庫、奥収蔵庫と80体の仏像が安置され、そのどれもが心に訴えかけてくる魅力を持っています。
美しく、力強く、慈悲深く儚い、おおよそ安置されている仏像のほとんどが”欠け仏”と呼ばれる破損仏ですが、素晴らしい仏像は朽ち方も素晴らしい。
いや、美しい朽ち方をしているから素晴らしく思うのか、うまく言葉では表せない魅力が達身寺の仏像群には溢れています。










※仏像の写真は今回特別に許可を頂き撮影させて頂きました。
通常は撮影禁止となっておりますのでご注意ください。
十九山 達身寺(たつしんじ)
兵庫県丹波市清住259
TEL : 0795-82-0762
拝観 : 9:00~16:00
拝観料 : 400円
駐車場 : 有り

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