静岡県・かんなみ仏の里美術館「かんなみの地で守り継がれてきた仏像群の巻き」
6月29日。
前日の茨城秘仏ツアーの興奮冷めないままに帰路へと着きつつ仏像拝観。
訪れたのは静岡県函南町にある「かんなみ仏の里美術館」。

函南町桑原区には平安時代となる薬師如来坐像や鎌倉時代 阿弥陀三尊像など二十四体もの仏像群が村人たちの手により守り継がれています。
平成20年に桑原区から函南町へと寄託され、貴重な文化財を後世へと残すため、より多くの方が観照出来る施設をと美術館の設立へと動き、2012年4月に「かんなみ仏の里美術館」がオープンしました。

美術館的というよりもどこかお堂の様な綺麗な建物。
開館時間と同時に到着しすぐさま館内へ。
黒を基調とした落ち着いた展示室は非常に美しくて仏像の魅力が溢れていました。
館内を独り占めしてゆっくりと守り継がれてきた仏像群を堪能。

公式HPより
平安時代作となる薬師如来坐像はたっぷりな量感を持った素晴らしい方。
丸々とした頬に胸や腹回りの厚さ、厳しめな表情は平安初期からの造形を感じさせるものの、衣文表現は平安後期に向かっていくような浅く整然と彫りこまれていました。
地方で出会うこの量感持った薬師如来はたまらないものがありました。

榧(カヤ)材の一木割剥ぎ造り 像高110cm 彫眼 県指定文化財
重要文化財に指定された阿弥陀三尊像は鎌倉時代慶派仏師である実慶の作と判明しており、目力が強く引き締めた口元と若々しく溌剌とした造形。
体躯も引き締まり平安薬師と比べると段違いのスタイリッシュさ。
衣文表現も薬師如来と比べると流麗で洗練された感じ。
脇の日光月光も同様ですが、腹回りのたっぷりとした肉感が色っぽく艶やかな魅力を感じさせてくれます。
力強くもあり色気もあると、さすがだなぁと見惚れてしまいました。

中尊 阿弥陀如来坐像 檜(ヒノキ)材の一木割剥ぎ造り 像高 89.1cm 重要文化財
左脇侍 勢至菩薩立像 檜(ヒノキ)材の一木割剥ぎ造り 像高106.1cm 重要文化財
右脇侍 観音菩薩立像 檜(ヒノキ)材の一木割剥ぎ造り 像高107.2cm 重要文化財
十二神将像も素晴らしい。
像高1mほどの立派な十二神将が12体。
平安時代の3体をはじめ、失われた像をそれぞれの時代で補われ現在12体を揃って残しています。
オフィシャルHPにてそれぞれの像様が見られますが(十二神将像)、写真から受ける印象と造像年代は少し違います。
おそらく、室町や江戸での補作が行われた際に補修も施され厚い色彩などがされたのではないかと思います。
造形美には差があるように見え、魅力的な像から簡易的だなと感じる像もあります。
しかし、実際に美術館で見る像容は黒を基調にされた空間と照明の質感とでどの像も非常に美しく、造形的にも統一感があるように見えました。
間違いなく写真よりも素晴らしい十二神将がいらっしゃいます。
とは言えやはり最も素晴らしいなと感じる像もあり、鎌倉時代の招杜羅立像が素晴らしかったかな。
顔の造形が素晴らしく前面に圧する迫力は他よりも抜きん出ていたと思います。
他にも平安後期の地蔵菩薩立像、毘沙門天像、聖観音菩薩立像なども。
聖観音菩薩立像はめちゃくちゃ好みの像で平安後期の特徴がよく出た像でした。
しかしここでは毘沙門天像を紹介したい。
動きは固く、力強さに欠けるかなぁとも感じたのですが、それを忘れさせてしまう甲冑や衣の表現が素晴らしく、平安後期から鎌倉期へと移り変わるくらいの彫り込まれた造形美が見えてきます。
甲冑は細かな表現もしっかりと表現され重厚さや気高さがあふれているようでした。
そして袖周りの美しく波打つ表現にため息。
ライティングの妙で美しい陰影があふれより一層に美しさを感じることが出来ました。
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毘沙門天立像 檜(ヒノキ)材の一木割剥ぎ造り 像高101.5cm 県指定文化財
かんなみ仏の里美術館の裏手の高台の方には、これらの像が元々安置されていた薬師堂が今も変わらず建っています。
お堂内に安置されていた時にも訪れることが出来ていたらなぁと思いますが、こればかりは仕方がありません。
しかし、その当時の空気だけでもとお堂を訪れてきました。
中には何もなく当時を偲ぶように安置されていた仏像の写真が立てかけられています。
堂内に優しく流れる音色は奥様が弾かれるオルガンの音。
噂に聞いていたオルガンを今も弾かれているようで、その音色を聞きながらこの堂内に仏像群が安置されていた風景を想像しながらゆったりとした時間を過ごしてきました。
予定していた時間を大幅に超えてしまっていたけど離れがたい魅力に囚われその場を後にすることが出来ませんでした。




薬師堂の裏手の方には西国三十三観音霊場があり、自然の中に石仏群がひっそりと苔むしながらたたずんでいます。
山の空気を胸一杯に吸いながら巡りました。



※仏像写真は美術館配布のペーパー及び公式HPより転載
かんなみ仏の里美術館
HP : http://www.kannami-museum.jp/
静岡県田方郡函南町桑原89-1
TEL : 055-948-9330
定休日 : 火曜日、12月29日~1月3日
駐車場 : 有り

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前日の茨城秘仏ツアーの興奮冷めないままに帰路へと着きつつ仏像拝観。
訪れたのは静岡県函南町にある「かんなみ仏の里美術館」。

函南町桑原区には平安時代となる薬師如来坐像や鎌倉時代 阿弥陀三尊像など二十四体もの仏像群が村人たちの手により守り継がれています。
平成20年に桑原区から函南町へと寄託され、貴重な文化財を後世へと残すため、より多くの方が観照出来る施設をと美術館の設立へと動き、2012年4月に「かんなみ仏の里美術館」がオープンしました。

美術館的というよりもどこかお堂の様な綺麗な建物。
開館時間と同時に到着しすぐさま館内へ。
黒を基調とした落ち着いた展示室は非常に美しくて仏像の魅力が溢れていました。
館内を独り占めしてゆっくりと守り継がれてきた仏像群を堪能。

公式HPより
平安時代作となる薬師如来坐像はたっぷりな量感を持った素晴らしい方。
丸々とした頬に胸や腹回りの厚さ、厳しめな表情は平安初期からの造形を感じさせるものの、衣文表現は平安後期に向かっていくような浅く整然と彫りこまれていました。
地方で出会うこの量感持った薬師如来はたまらないものがありました。

榧(カヤ)材の一木割剥ぎ造り 像高110cm 彫眼 県指定文化財
重要文化財に指定された阿弥陀三尊像は鎌倉時代慶派仏師である実慶の作と判明しており、目力が強く引き締めた口元と若々しく溌剌とした造形。
体躯も引き締まり平安薬師と比べると段違いのスタイリッシュさ。
衣文表現も薬師如来と比べると流麗で洗練された感じ。
脇の日光月光も同様ですが、腹回りのたっぷりとした肉感が色っぽく艶やかな魅力を感じさせてくれます。
力強くもあり色気もあると、さすがだなぁと見惚れてしまいました。

中尊 阿弥陀如来坐像 檜(ヒノキ)材の一木割剥ぎ造り 像高 89.1cm 重要文化財
左脇侍 勢至菩薩立像 檜(ヒノキ)材の一木割剥ぎ造り 像高106.1cm 重要文化財
右脇侍 観音菩薩立像 檜(ヒノキ)材の一木割剥ぎ造り 像高107.2cm 重要文化財
十二神将像も素晴らしい。
像高1mほどの立派な十二神将が12体。
平安時代の3体をはじめ、失われた像をそれぞれの時代で補われ現在12体を揃って残しています。
オフィシャルHPにてそれぞれの像様が見られますが(十二神将像)、写真から受ける印象と造像年代は少し違います。
おそらく、室町や江戸での補作が行われた際に補修も施され厚い色彩などがされたのではないかと思います。
造形美には差があるように見え、魅力的な像から簡易的だなと感じる像もあります。
しかし、実際に美術館で見る像容は黒を基調にされた空間と照明の質感とでどの像も非常に美しく、造形的にも統一感があるように見えました。
間違いなく写真よりも素晴らしい十二神将がいらっしゃいます。
とは言えやはり最も素晴らしいなと感じる像もあり、鎌倉時代の招杜羅立像が素晴らしかったかな。
顔の造形が素晴らしく前面に圧する迫力は他よりも抜きん出ていたと思います。
他にも平安後期の地蔵菩薩立像、毘沙門天像、聖観音菩薩立像なども。
聖観音菩薩立像はめちゃくちゃ好みの像で平安後期の特徴がよく出た像でした。
しかしここでは毘沙門天像を紹介したい。
動きは固く、力強さに欠けるかなぁとも感じたのですが、それを忘れさせてしまう甲冑や衣の表現が素晴らしく、平安後期から鎌倉期へと移り変わるくらいの彫り込まれた造形美が見えてきます。
甲冑は細かな表現もしっかりと表現され重厚さや気高さがあふれているようでした。
そして袖周りの美しく波打つ表現にため息。
ライティングの妙で美しい陰影があふれより一層に美しさを感じることが出来ました。
_convert_20140929210938.jpg)
毘沙門天立像 檜(ヒノキ)材の一木割剥ぎ造り 像高101.5cm 県指定文化財
かんなみ仏の里美術館の裏手の高台の方には、これらの像が元々安置されていた薬師堂が今も変わらず建っています。
お堂内に安置されていた時にも訪れることが出来ていたらなぁと思いますが、こればかりは仕方がありません。
しかし、その当時の空気だけでもとお堂を訪れてきました。
中には何もなく当時を偲ぶように安置されていた仏像の写真が立てかけられています。
堂内に優しく流れる音色は奥様が弾かれるオルガンの音。
噂に聞いていたオルガンを今も弾かれているようで、その音色を聞きながらこの堂内に仏像群が安置されていた風景を想像しながらゆったりとした時間を過ごしてきました。
予定していた時間を大幅に超えてしまっていたけど離れがたい魅力に囚われその場を後にすることが出来ませんでした。




薬師堂の裏手の方には西国三十三観音霊場があり、自然の中に石仏群がひっそりと苔むしながらたたずんでいます。
山の空気を胸一杯に吸いながら巡りました。






※仏像写真は美術館配布のペーパー及び公式HPより転載
かんなみ仏の里美術館
HP : http://www.kannami-museum.jp/
静岡県田方郡函南町桑原89-1
TEL : 055-948-9330
定休日 : 火曜日、12月29日~1月3日
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この記事へのコメント
>大ドラさん
いつもコメントありがとうございます!
地方の仏像を巡る楽しみにはやっぱり守られてきた歴史や、受け継がれてきた仏さまを今まさにお守りしている方々と触れ合える事ですよね。
伊豆ならんだの里河津平安の仏像展示館へも早く行ってみたいです。
また、すぐ近所には上原近代美術館があってそこも楽しみなんです。
あっちもこっちも行きたくて、休みとお金が全然追いつきません(笑)
いつもコメントありがとうございます!
地方の仏像を巡る楽しみにはやっぱり守られてきた歴史や、受け継がれてきた仏さまを今まさにお守りしている方々と触れ合える事ですよね。
伊豆ならんだの里河津平安の仏像展示館へも早く行ってみたいです。
また、すぐ近所には上原近代美術館があってそこも楽しみなんです。
あっちもこっちも行きたくて、休みとお金が全然追いつきません(笑)
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- 大ドラ - 2014年10月02日 19:59:09
伊豆方面へ行くのなら、『かんなみ仏の里美術館』は、河津にある『伊豆ならんだの里河津平安の仏像展示館』と並んで、僕としては行きたいところに思えてきます。
写真を拝見する限り、いずれの仏様も生き生きとして存在を主張する感じですし、毘沙門様に至っては今にも動きそうに思えます。