奈良県・千万院「室町宿院仏師・源四郎の彫りだす魅惑の十一面の巻き」

偶然のご縁で拝観させて頂いた千體寺。
しかし次に拝観するお寺がありません。
というのも、この日は奈良市の宿院町に工房をかまえた室町期の町仏師、宿院仏師の仏像を巡ろうと計画していました。
しかしながら、なかなか拝観予約がうまくいかず。。。

役場へ連絡を入れるも一般公開はされていない、役場では管理していないので分からない、世話方さんの連絡先は教えられない、などなど断りの連続で。。。
通常であれば断られると諦めて他をあたるのですが、この日の計画では断られ過ぎたのが逆にちくしょーとの思いが強くなり。。。
とりあえず断られたとこ全部現地へ行って環境を確認してみようと思い立ち、断られたままに現地へと向かいました。

そしてまず向かったのが田原本町の千万院。
田原本町法貴寺にある千万院は町名にもなっている法貴寺(ほうけいじ)の子院であり、法貴寺は元を「法起寺」と呼ばれていたそうで、寺伝によるとその創建は法隆寺よりも古く、聖徳太子が創建し秦河勝が賜り、かつては七堂伽藍を有する大寺院であったそうです。
しかし江戸中期には本坊の実相院と千万院を残すのみとなり、明治期の廃仏毀釈で千万院のみとなりました。
現在、千万院の僧坊はなく、薬師堂を千万院と呼ぶ習わしとなっているそうです。

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さて、千万院ですが通常一般公開はされておらず団体のみ予約拝観が出来ます。その際は堂内へ入れて頂けるそうですが個人では不可。
ダメ元で役場へ連絡を入れてみましたが、やはり個人である為拝観は不可とのことで管理者様を教えて頂く事も出来ませんでした。。。
宿院仏師への想いを熱く語りましたがダメでしたね(^^;
ネットで検索をかけてみると堂外から拝観は出来るとの事で、現地へと向かいどのような拝観環境かと確認してまいりました。

国道24号線の小坂の信号を東へ入り大和川沿いを北上すると、左手に池坐朝霧黄幡比賣神社が見えてくる。
その境内北側に小さなお堂があるのが現在の千万院薬師堂です。

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池坐朝霧黄幡比賣神社


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千万院薬師堂


お堂の扉窓は格子になっており南に面していることから堂内には光がよく入り外からでも比較的良好に拝観することが出来ました。
千万院を調べるとまず検索に上がるのは国の重要文化財に指定された不動明王立像。
像高は79.5cmの立像でヒノキ材の一木造りで前後に割剥ぎます。
一部彩色や衣には截金文様が残り、体躯も堂々と胸を張ったお姿で力強い表情で睨みを利かせています。
肩口から二の腕などの肉付きも良く若々しい平安後期の像です。
しかし宿院仏師の十一面観音が気になりすぎて写真はブレブレのものしか撮れてなかった。。。

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堂内の左奥にお目当ての宿院仏師 源四郎作 十一面観音菩薩立像がいらっしゃいます。
像高は189.5cm、ヒノキの寄木造りで天理の西念寺像、広陵町の大福寺像と並び180cmを超える等身大の十一面観音です。
ふくよかな頬にしっかりとした目線。宿院仏師のお顔です。
宿院仏師のお顔の中でもかなりのイケメンに分類されると思ういいお顔をされています。
師事した東大寺大法師実清の切れ長で吊り目な表情よりは穏やかな表情。
頭体のバランスは優れ正面観照感が強く、素直に美しい造形だなと感じる仏像です。
特異な腕の長さといった事はなく本当に等身大な造形で、素木造りの素朴な風合いと力強く光る玉眼の魅力が溢れていました。
造形は長谷寺式十一面。
右手に錫杖を持ち、左手には水瓶を持つ形。
垂れる天衣は両膝間で捻りが加えられ条帛は胸から垂れさがる。
これらの特徴は長谷寺の十一面観音像と共通し、源四郎が師事した実清が現存する長谷寺十一面観音像の御衣木加持ならびに作者という関係が影響しているのかもしれない。

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    日本の美術12「宿院仏師」より

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    奈良国立博物館特別展「宿院仏師」図録より


また、堂内には同じく源四郎作ではないかと思われる薬師如来座像が安置されています。
思われるというのは、宿院仏師の造仏はほとんどその全てに必ずと言っていいほど像内に製作年および作者を記しています。
しかし中には銘は無くとも宿院仏師の造像と考えられる仏像がいくつか知られていて、その中の一つにこちらの薬師如来座像があります。
源四郎時代の薬師如来と考えられ、寄りかかるように安置された十二神将像と一具である大作であるが薬師如来には銘記が確認されなかったそうです。
尊容は下方を見つめるしっかりとした眼差し端正な目鼻立ちと唇。
頭体のバランスは素晴らしく衣文表現は宿院仏師が取り入れる事例が多くみられる平安初期の翻派式衣文を見せてくれます。

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格子戸すぐの前面にいらっしゃるのは賓頭盧尊者で像高は60cm程のヒノキの寄木造り。
堂内でも風雨が当たりそうな前に安置され、像の特徴的にお参りする方々に触れられてきたことからか、表面の磨滅や彩色の剥落などが顕著でやや不気味な印象もぬぐえませんが、この像は源四郎の子息と考えられる源次と、その子である源四郎(ややこしい(^^; )の造仏であるとの銘が残っています。
(墨書銘にある宿院仏師・源衛門とは十一面観音造像の源四郎の子息源次と考えられています)
宿院仏師には珍しい尊者像であり、貴重な作例です。

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僕が訪れた折は堂内にも光がよく入り、堂外からの拝観にしては良く造形を確認できる拝観状況でした。
もちろん堂内に入り拝観することが出来るに限りますが、堂外からでもなかなかに満足できる拝観をすることができ、断られても現場に来てみるもんだなと次の断られた地へと向かうのでした。





法貴寺(ほうけいじ) 千万院(せんまんいん)
奈良県田原本町法貴寺504
TEL : 0744-32-2901(田原本町役場)
拝観 : 団体のみ(ただし堂外から拝観可)
駐車場 : 無し(神社境内付近に路駐...)










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この記事へのコメント

- yamataka - 2014年08月07日 10:11:52

マイナーな寺院訪問楽しみに毎回見てます。

「個人は不可」と言われるのが一番「ちょっとな~」と思ってしまいますね。
下世話な言い方をすれば、
確かに労力に対しての対価が期待できないのはわかりますけど、、、。
最低10人とか言ってる所もあるようで、
そうゆう所は10人分払えば見れるということでしょうね。
無理なく時間が合えば開けていただく配慮も欲しいです。

先日、山形の慈恩寺に行った時、
ついでに宝積院の観音さんも見たかったのですが、
丁寧に断られました。
しかたなく今月10日再訪しますが、
交通費だけでも拝観料の10人分や20人分じゃあきかないです。




- 迦楼馬-カルマ- - 2014年08月07日 22:44:04

はじめましてyamatakaさん!
確かに個人拝観不可はがっかりしますね。
ツアーでも組めないならどうしろと。。。って悩んでしまいます(笑)
しかし世話方さんの身になると拝観者一人の為に時間を割くのも申し訳ないなぁとも思います。
いついつなら都合開いてるから一人でもお堂開けるよぉ~と柔軟であれば嬉しいに越したことはないですけどね!

個人的には奈良が大好きなので奈良のあまり知られていないお寺、仏像を当ブログで紹介していければなと思いブログ運営しているのでマイナー寺院楽しみにしているといわれるとめっちゃ嬉しいです!

山形の宝積院さんは拝観と申し込むと断ると仰っていました。
拝みたい、ご縁を頂きたいとの申し込みならお堂を開けるそうです(^^;
宝積院さんに限らず、拝観の申し込みの際の申し出方で受け入れて下さったり断られたりも結構ありますよね。。。
僕も何度も拝観なんて受け付けません!と怒られたことが多々あります。。。(--;

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ケノーベル エージェント - 2014年08月01日 08:48

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奈良市エージェント:貴殿の記事ダイジェストをGoogle Earth(TM)とGoogle Map(TM)のエージェントに掲載いたしました。訪問をお待ちしています。

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Author:迦楼馬-カルマ-
仏像の美しさに感動して以来、ひたすらに仏像拝観に明け暮れる三十路街道を走る男の拝観日記。
仏像拝観歴は非常に浅いので間違いも多々あり!日々精進でございます。
僕自身が見て感じた仏像観を記していますので美術史的、仏教学的に誤っていることが多々あると思ので、その時はご教授ください。



訪れた寺社の全てを記事にするととても追いつかないので佛旅速報でまかない本編記事はピックアップという形になっていきます。

リアルタイムな仏像拝観速報はTwitterにて!
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