奈良県・千體寺(せんたいじ)「美しき無指定の阿弥陀三尊の巻き」
6月11日の拝観は奈良の仏像拝観へと出かけて参りました。
奈良県大和郡山市丹後庄町に松本寺(しょうぼんじ)というお寺がありましたが、現在は廃寺となって跡地には公民館が建てられています。
公民館には仏間が設けられ、松本寺のご本尊をはじめとする仏像が安置されています。
今回、松本寺の仏像を拝観しようと世話方さんへ連絡を入れたのですが、現在は當麻寺の副住職が管理をされていて今は管理していないとの事。
実はここに安置されている仏像が室町時代の宿院仏師像ということで拝観したかったのですが、改めて當麻寺の方へ連絡を取りいつか拝観したいと思います。
その代りと、同町にある千體寺さんの収蔵庫を現在は管理されており、その収蔵庫を開けて下さることに。
千體寺も現在は廃寺となっており境内に収蔵庫を残すのみ。
その収蔵庫には重要文化財に指定された紫檀塗螺鈿厨子(したんぬりらでんずし)、そしてその厨子内には阿弥陀三尊像が安置されています。


大和郡山市の史跡・文化財の紹介ページでは以下の様に紹介されています。
「黒漆塗りで、基壇の羽目板にインドと中国の浄土祖師像を1体ずつ計10体彩絵します。各像とも緻密な筆致で描かれています。基壇の天板や柱には朱漆で木目を描く紫檀塗が施されています。
基壇の四隅に柱を建て屋根をのせます。当初は四方にとりはずしのできる一枚扉がはめ込まれ、四方から礼拝する特殊な安置方法がとられていたようです。
製作時期は鎌倉時代13世紀と推定されています。」

鎌倉時代とされるお厨子ですが、基壇に描かれる祖師像も非常に良く残り確認することが出来ます。
その祖師像は浄土祖師像とのことですが、正面は向かって右からインドの高僧、馬鳴菩薩、龍樹菩薩、天親(世親)菩薩、
左側面は右から中国の高僧、慧遠法師、曇鸞法師、背面は右より導綽禅師、善導法師、懐感法師、右側面は右から法照法師、少康法師となっています。
浄土十祖像との事で、他ではなかなか例のない図例だそうです。
装飾も美しく、お厨子内には千体仏が安置される壮大なお厨子です。




そして厨子内に安置されているのは阿弥陀三尊像。
この方々が素晴らしかった。文化財的には無指定ですが素晴らしい。
脇侍の観音勢至が素晴らしいですが、特に勢至菩薩の美しさはため息が出ました。
おそらくは鎌倉の後期頃の作と思いますが、中尊の阿弥陀如来は室町以降の作となります。
廃仏毀釈の折りに法隆寺へ一時預けられたそうですが、帰ってこられた時には中尊が変わっていたと世話方さんはおっしゃっていました。
三尊揃っていればそれは素晴らしかったはずなのになぁと少し残念そう。
これには僕もうなずくしかなく、この脇侍の素晴らしさを見れば中尊の阿弥陀如来もより素晴らしかったはず。
もちろん現在の阿弥陀如来も素晴らしいのですが脇侍の美しさがより一層本来の阿弥陀如来の美しさを想像してしまいます。







勢至菩薩、観音菩薩の腰の角度の妙はなんとも柔らかくしなやか。
両足をぐっと屈めて身を沈める観音菩薩、右足に重心を乗せ左足を軽やかに屈する勢至菩薩。
衣の流れがまた美しくてたまりません。
膝裏で持ち上がるように捻り、足首のあたりでたゆむ様に衣の柔らかさが表現されます。
ホントめちゃくちゃ美しいです。これで無指定か?!と疑問に感じてしまいますが、これが奈良の奥深さなのかもしれません。
観音菩薩像




勢至菩薩像







偶然のご縁でお会いすることが出来た阿弥陀三尊像の美しさ。
来迎の姿勢の美しさをまざまざと見せつけられた三尊です。
頭から首への曲りと、背筋から太ももへのライン。
S字の美しさがこれでもかと表されて、足元の衣紋の柔らかい表現にため息。
写実的で張りのある頬の肉付きや、膝裏でひるがえる衣の表現なんかは運慶工房と繋がりがあるのかなぁとも想像しながら拝観させて頂くのでした。
奈良は奥深い。
千體寺(せんたいじ)
奈良県大和郡山市丹後庄町7番地
TEL : 0743-53-1151(大和郡山市役所)
拝観 : 要予約
拝観料 : 志納
駐車場 : 無し

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奈良県大和郡山市丹後庄町に松本寺(しょうぼんじ)というお寺がありましたが、現在は廃寺となって跡地には公民館が建てられています。
公民館には仏間が設けられ、松本寺のご本尊をはじめとする仏像が安置されています。
今回、松本寺の仏像を拝観しようと世話方さんへ連絡を入れたのですが、現在は當麻寺の副住職が管理をされていて今は管理していないとの事。
実はここに安置されている仏像が室町時代の宿院仏師像ということで拝観したかったのですが、改めて當麻寺の方へ連絡を取りいつか拝観したいと思います。
その代りと、同町にある千體寺さんの収蔵庫を現在は管理されており、その収蔵庫を開けて下さることに。
千體寺も現在は廃寺となっており境内に収蔵庫を残すのみ。
その収蔵庫には重要文化財に指定された紫檀塗螺鈿厨子(したんぬりらでんずし)、そしてその厨子内には阿弥陀三尊像が安置されています。


大和郡山市の史跡・文化財の紹介ページでは以下の様に紹介されています。
「黒漆塗りで、基壇の羽目板にインドと中国の浄土祖師像を1体ずつ計10体彩絵します。各像とも緻密な筆致で描かれています。基壇の天板や柱には朱漆で木目を描く紫檀塗が施されています。
基壇の四隅に柱を建て屋根をのせます。当初は四方にとりはずしのできる一枚扉がはめ込まれ、四方から礼拝する特殊な安置方法がとられていたようです。
製作時期は鎌倉時代13世紀と推定されています。」

鎌倉時代とされるお厨子ですが、基壇に描かれる祖師像も非常に良く残り確認することが出来ます。
その祖師像は浄土祖師像とのことですが、正面は向かって右からインドの高僧、馬鳴菩薩、龍樹菩薩、天親(世親)菩薩、
左側面は右から中国の高僧、慧遠法師、曇鸞法師、背面は右より導綽禅師、善導法師、懐感法師、右側面は右から法照法師、少康法師となっています。
浄土十祖像との事で、他ではなかなか例のない図例だそうです。
装飾も美しく、お厨子内には千体仏が安置される壮大なお厨子です。




そして厨子内に安置されているのは阿弥陀三尊像。
この方々が素晴らしかった。文化財的には無指定ですが素晴らしい。
脇侍の観音勢至が素晴らしいですが、特に勢至菩薩の美しさはため息が出ました。
おそらくは鎌倉の後期頃の作と思いますが、中尊の阿弥陀如来は室町以降の作となります。
廃仏毀釈の折りに法隆寺へ一時預けられたそうですが、帰ってこられた時には中尊が変わっていたと世話方さんはおっしゃっていました。
三尊揃っていればそれは素晴らしかったはずなのになぁと少し残念そう。
これには僕もうなずくしかなく、この脇侍の素晴らしさを見れば中尊の阿弥陀如来もより素晴らしかったはず。
もちろん現在の阿弥陀如来も素晴らしいのですが脇侍の美しさがより一層本来の阿弥陀如来の美しさを想像してしまいます。







勢至菩薩、観音菩薩の腰の角度の妙はなんとも柔らかくしなやか。
両足をぐっと屈めて身を沈める観音菩薩、右足に重心を乗せ左足を軽やかに屈する勢至菩薩。
衣の流れがまた美しくてたまりません。
膝裏で持ち上がるように捻り、足首のあたりでたゆむ様に衣の柔らかさが表現されます。
ホントめちゃくちゃ美しいです。これで無指定か?!と疑問に感じてしまいますが、これが奈良の奥深さなのかもしれません。
観音菩薩像




勢至菩薩像







偶然のご縁でお会いすることが出来た阿弥陀三尊像の美しさ。
来迎の姿勢の美しさをまざまざと見せつけられた三尊です。
頭から首への曲りと、背筋から太ももへのライン。
S字の美しさがこれでもかと表されて、足元の衣紋の柔らかい表現にため息。
写実的で張りのある頬の肉付きや、膝裏でひるがえる衣の表現なんかは運慶工房と繋がりがあるのかなぁとも想像しながら拝観させて頂くのでした。
奈良は奥深い。
千體寺(せんたいじ)
奈良県大和郡山市丹後庄町7番地
TEL : 0743-53-1151(大和郡山市役所)
拝観 : 要予約
拝観料 : 志納
駐車場 : 無し

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