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大阪府・堺市博物館「法道寺の至宝展の巻き」

常光寺から車で30分ほど、次に訪れたのは堺市博物館。
こちらでは堺市南東部・上神谷地区にある法道寺の寺宝を一堂に会した「法道寺の至宝展」が催されていました。
寺宝の一つである重要文化財・十六羅漢像十六幅が、国・府・市の補助金を得て六年の歳月をかけて修復された、その完成記念として催されたものです。
過去にも法道寺の寺宝については堺市博物館にて特別展が催されてきたそうですが、今回の特別展示はその集大成となるような、法道寺の寺宝のほぼ全容を紹介する内容となっています。

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まず展示場へ入って飛び込んでくるのは寺名にもなっている法道仙人奇像。
見た瞬間には役行者像かと思いましたが、役行者像が錫杖を持っていることが多いのに対し、法道仙人は鉄の宝鉢を持たれています。
そのことから空鉢(くはつ)、空鉢仙人(からはちせんにん)とも呼ばれています。
元はインド出身の僧で、推古天皇の時代、6~7世紀に日本へと渡ってきたとされます。
播磨国、現在の兵庫県の産学一体に開山、開基として名を残しますが、本当の事跡や没年、墓所などすべて不明で、伝わっているのはその名前と仙術にまつわる伝説ばかり。
実在したのか?とも疑問視されることもあるそうですが、日本に渡るときに共に渡ったされる牛頭天王は姫路市にある広峰神社に祀られ、その後現在は八坂神社中の座に祭られたとされていることから、播磨国が法道仙人と関わりが深い事は間違いないそうで。
寺院のみならず、この地にある不思議な自然物なども法道仙人と結び付けて伝えられていることは、この地に確かな法道信仰があったことを示します。

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その後続々と続く仏像の展示。
法道寺は金堂須弥壇に本尊として薬師如来が3体祀られているそうですが、その3体ともがお出ましになっていました。
まずは中尊として祀られている薬師如来坐像で、顔、胸、そして施無畏印の右手に後補の金箔が見える方。
堂内では脇侍に日光月光菩薩を従えているそうです。
肩幅が広く穏やかな体躯で薄く綺麗に規則的に流れる衣文線は平安後期の特徴を見せてくれます。
上に組んだ左足のかかとを衣に包む衣の表現が優しくて綺麗です。
ヒノキ材の一木割矧ぎ造りで彫眼、像高は62cm。
3体の中で最も衣文線の美しい薬師如来でした。

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並んで堂内では須弥壇向かって右に安置される薬師如来坐像。
薄目で見据える力強い不思議な目をされた薬師如来。
中尊よりは小さな体躯で、どことなくバランスに欠ける印象。
衣文線はやや硬く地方佛的な印象も。
頭部は寄木造りで体幹部は一木造りであることから、元々は別の像が組み合わさったのではないかとの事。
像高は59.2cm。

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須弥壇向かって左に安置されているという薬師如来坐像はもっとも端正な顔立ちで、
定朝様を感じさせる薬師如来でした。
体躯の肉付きも良く、衣文線も柔らかで磨滅が見られ薄れているものの、
体の肉付きが見て取れる柔らかさでした。
ヒノキ材の一木割剥ぎ造り、像高51cm。

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展示室中央に展示された胎蔵界大日如来像は非常に地方的で丸々とした顔に大きな団子鼻。
強く結んだ口元なども、その表情を特異なものにしているように感じました。
ある時期に大きな改変が加えられたのであろうとの事で当時の尊名は不明。
宝冠阿弥陀との考えもあるそうですが、阿弥陀如来であれば印相は指を結んだ阿弥陀定印となるはず。
しかし、大日如来ならば衲衣ではなく、条帛と裳を着す。
いろいろな考察があった上で、今回の展示では法界定印の印相から胎蔵界の大日如来として展示されたそうです。
非常に面白いと感じる造形の考察で、言われなければ僕なんかは気づかずに胎蔵界大日如来かぁ珍しいなぁとそれだけで、大日如来としての衣の表現にまで考えは及ばなかったでしょう。

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そして恐らくこの大日如来と並んでいたか。。。近辺に展示されていた阿弥陀如来立像(展示順の記憶が曖昧になってる(笑)
両手両足の先を除き、両袖から垂下する薄い衣までを一材から彫りだす一木造りで、目は彫眼、肉身部には白土地が残る。
また、台座や舟形光背まで当初の物であるとの事で、二重円光の周縁部に施された蓮華唐草の透かし彫りや衣の袖口などからも、薄彫りの技術に長けた仏師の作であると考えられています。
衣の造形は非常に薄くて磨滅も進み木目が浮き出ていますが、全体的に大らかなゆったり優しい印象を受ける阿弥陀様ですね。
朽ちた感がありますが、一木より彫りだされ光背も現存する姿に、大きな信仰の力、信仰の厚さを感じてグっときます。

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そして一列に整然と陳列された十二神将像。
鎌倉時代の作と考えられ、一木割剥ぎ造りの玉眼嵌め込み、像高は70cm前後。
胴長でぎこちない動作も目立ちますが個人的には子神、寅神、午神、酉神の造形が躍動感に富み、顔の筋肉の表現や表情、衣の捻じれ波の表現が素晴らしく感じました。
十二体全てが揃って展示されているのも爽快で見応えあります。
慶派の造像と考えられている優れた十二神将が一列に並んで踊るさまはカッコ良くてうんうんうんと何度も頷いてしまう満足感。

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展示された仏像の中で最も洗練されていたのが現在、食堂に安置されているという平安後期の阿弥陀如来坐像。
ヒノキ材の一木割剥ぎ造りで、彫眼。
堂々とした体躯に品のある非常に美しい定朝様を示す阿弥陀様です。
特徴的なのは八角形裳懸坐に坐し、八方に裳を垂らします。
同様の例は滋賀県・金胎寺像や京都・三千院像など数例が知られるのみで、非常に洗練された像であることから当時でも一線で活躍した仏師の作であろうと考えられています。
本当に美しくて瞑想的で品のある阿弥陀如来坐像です。

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ざっと仏像を追いかけていきましたが、訪れる前の期待をはるかに超える内容で驚きました。
ご本尊の三薬師が全てお出ましになり、十二神将も勢揃い、また多宝塔や食堂などからも尊像がお出ましになるなど、過去の法道寺展の集大成と謳うに相応しい大満足の内容でした。
危うく見逃すところでしたが、訪れることが出来て良かった。


※仏像写真は全て図録より




堺市博物館
大阪府堺市堺区百舌鳥夕雲町2丁 大仙公園内
駐車場 : 大仙公園仁徳御陵駐車場(有料)








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仏像の美しさに感動して以来、ひたすらに仏像拝観に明け暮れる四十路街道を走る男の拝観日記。
仏像拝観歴は非常に浅いので間違いも多々あり!日々精進でございます。
僕自身が見て感じた仏像観を記していますので美術史的、仏教学的に誤っていることが多々あると思ので、その時はご教授ください。



訪れた寺社の全てを記事にするととても追いつかないので佛旅速報でまかない本編記事はピックアップという形になっていきます。

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