奈良県 安産寺
過去の見仏記を一つ。
5月にお参りさせて頂いた折の話です。
奈良県宇陀市にある室生区の中村と呼ばれる地区に重要文化財に指定される地蔵菩薩立像がいらっしゃいます。
安産時という無住のお寺(兼集会所)に収蔵庫を備え中村自治会の皆様によって守られてきた地蔵菩薩。
常時拝観が可能ではなく初地蔵会の1月24日、御縁日の8月第4日曜、毎月9日(午前)はご開扉されていますがそれ以外の日は予約での拝観となります。
予約連絡は0745-92-2001( 室生地域事務所)へ入れ確認を取る形ではありますが、本堂には各世話方さんの連絡先が張り出されていますので直接の連絡も可能だと思います。

今回、僕は世話方の一人 洞出(ほらで)さんの案内を受け地蔵菩薩にお会いさせて頂きました。
村に伝わるお話では宇陀川が増水したときに岸にこのお地蔵様が流れついたそうです。慌てて村人で集落へ運び込んだが突然どうしても足が進まなくなり腰を下ろすとお地蔵様も全く動かなくなった。どう動かそうとしても動かない。
これはお地蔵様がここにお堂を建てろと言っているのだと思い建てたのが安産寺のはじまりだとか。
また、流れ着いたのが9月9日だったことから毎月9日を御縁日として開扉しています。
こちらの地蔵菩薩は子安地蔵としてのご利益がありその数多くの逸話も聞かせて頂きました。
中でも驚いたのは当の洞出さんご両親の逸話。
ご両親になかなか子が出来ず病院で看てもらうと手術が必要だと。
手術の日取りも決めたある日、普段はすっかり忘れていたお地蔵様の顔がふと浮かんだそうです。
これは何かあるのかなぁ。。もしや手術をやめろと言うてるのかなあ。。と思い立ち手術はキャンセル。
お地蔵様に願掛けに向かいます。
翌年の秋にめでたく懐妊され産まれたのが私ですと仰っておられました。
他にも数々の逸話を聞かせて頂き地蔵菩薩との対面に胸が高揚します。
そしていよいよ地蔵菩薩立像との対面です。


像高177.7cm カヤの一木造り。平安時代初期の作です。
左手に宝珠を持ち、右手は錫杖を持たずにゆるく垂らし与願の印を示します。
手の平を横へと傾けた珍しい与願印です。与願印とは手の平を前に向けるものと思っていましたが洞出さん曰く与願の印と伝わっているそうです。
それとも安産祈願のご利益からきっと与願の印だろうとの話になったのだろうか。
尊様は切れ長の目に鼻筋が通り頬のゆったりとされたなんとも穏やかなお顔をされています。
肩から胸へ、腹から腿へとたっぷりの量感を持ち平安初期の確かな造形が見られ平安初期の量感ある仏像が大好きな僕は胸が高揚します。
造形的に特徴的な点がいくつかあり大きな耳や、袈裟を来ておらず地蔵菩薩と言うよりは如来系に近い姿をされています。
また沓(くつ)を履かれていたり。沓を履かれた地蔵菩薩は大変珍しいですね。
衣紋は腹から腿へ美しいY字に流れ左腕の肩からの流れは本当に素晴らしいものでした。
全体に優しい柔らかい大波と、小波が二重に連続して続く漣波式(れんぱしき)と呼ばれる衣紋表現で浅い彫りの波が美しく続きます。
この衣紋は室生寺の本尊 釈迦如来に見られる特徴的な衣紋で室生寺式とも呼ばれるものです。
この地蔵菩薩が本来は室生寺に安置されていたことを物語る一つの物証でもあるわけです。
現在室生寺に安置されている地蔵菩薩は光背の大きさと合わずどこかに光背の持ち主である方がいるはずだと探した末に見つかったのがこちらの地蔵菩薩だったそうです。
東京国立博物館へ出展された時だったかに室生寺の光背を背にしたそうですが、そのお姿はまさに神々しく大変感動したと仰っていました。
そのお姿を目にできる日が再び来ないものかと何十年でも待ちたい気持ちになりました。
村の方たちの手によって大事に守られ愛されてきた仏さまに、守ってこられた方と共にお会いできる素晴らしさは何にも代え難い幸せな時間でした。
仏像好きの最高の一瞬一瞬が中村地区にはありました。
満面の笑みでお地蔵さんへの愛を語る幸せそうな洞出さんと神秘的な子安地蔵。
リピーターが後を絶たないと仰っていた意味がわかります。


妖しく美しい魅力溢れる地蔵菩薩立像。
何度でも。
何度でもお会いしたいと心から強く強く思わずにはいられない仏像です。
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5月にお参りさせて頂いた折の話です。
奈良県宇陀市にある室生区の中村と呼ばれる地区に重要文化財に指定される地蔵菩薩立像がいらっしゃいます。
安産時という無住のお寺(兼集会所)に収蔵庫を備え中村自治会の皆様によって守られてきた地蔵菩薩。
常時拝観が可能ではなく初地蔵会の1月24日、御縁日の8月第4日曜、毎月9日(午前)はご開扉されていますがそれ以外の日は予約での拝観となります。
予約連絡は0745-92-2001( 室生地域事務所)へ入れ確認を取る形ではありますが、本堂には各世話方さんの連絡先が張り出されていますので直接の連絡も可能だと思います。

今回、僕は世話方の一人 洞出(ほらで)さんの案内を受け地蔵菩薩にお会いさせて頂きました。
村に伝わるお話では宇陀川が増水したときに岸にこのお地蔵様が流れついたそうです。慌てて村人で集落へ運び込んだが突然どうしても足が進まなくなり腰を下ろすとお地蔵様も全く動かなくなった。どう動かそうとしても動かない。
これはお地蔵様がここにお堂を建てろと言っているのだと思い建てたのが安産寺のはじまりだとか。
また、流れ着いたのが9月9日だったことから毎月9日を御縁日として開扉しています。
こちらの地蔵菩薩は子安地蔵としてのご利益がありその数多くの逸話も聞かせて頂きました。
中でも驚いたのは当の洞出さんご両親の逸話。
ご両親になかなか子が出来ず病院で看てもらうと手術が必要だと。
手術の日取りも決めたある日、普段はすっかり忘れていたお地蔵様の顔がふと浮かんだそうです。
これは何かあるのかなぁ。。もしや手術をやめろと言うてるのかなあ。。と思い立ち手術はキャンセル。
お地蔵様に願掛けに向かいます。
翌年の秋にめでたく懐妊され産まれたのが私ですと仰っておられました。
他にも数々の逸話を聞かせて頂き地蔵菩薩との対面に胸が高揚します。
そしていよいよ地蔵菩薩立像との対面です。


像高177.7cm カヤの一木造り。平安時代初期の作です。
左手に宝珠を持ち、右手は錫杖を持たずにゆるく垂らし与願の印を示します。
手の平を横へと傾けた珍しい与願印です。与願印とは手の平を前に向けるものと思っていましたが洞出さん曰く与願の印と伝わっているそうです。
それとも安産祈願のご利益からきっと与願の印だろうとの話になったのだろうか。
尊様は切れ長の目に鼻筋が通り頬のゆったりとされたなんとも穏やかなお顔をされています。
肩から胸へ、腹から腿へとたっぷりの量感を持ち平安初期の確かな造形が見られ平安初期の量感ある仏像が大好きな僕は胸が高揚します。
造形的に特徴的な点がいくつかあり大きな耳や、袈裟を来ておらず地蔵菩薩と言うよりは如来系に近い姿をされています。
また沓(くつ)を履かれていたり。沓を履かれた地蔵菩薩は大変珍しいですね。
衣紋は腹から腿へ美しいY字に流れ左腕の肩からの流れは本当に素晴らしいものでした。
全体に優しい柔らかい大波と、小波が二重に連続して続く漣波式(れんぱしき)と呼ばれる衣紋表現で浅い彫りの波が美しく続きます。
この衣紋は室生寺の本尊 釈迦如来に見られる特徴的な衣紋で室生寺式とも呼ばれるものです。
この地蔵菩薩が本来は室生寺に安置されていたことを物語る一つの物証でもあるわけです。
現在室生寺に安置されている地蔵菩薩は光背の大きさと合わずどこかに光背の持ち主である方がいるはずだと探した末に見つかったのがこちらの地蔵菩薩だったそうです。
東京国立博物館へ出展された時だったかに室生寺の光背を背にしたそうですが、そのお姿はまさに神々しく大変感動したと仰っていました。
そのお姿を目にできる日が再び来ないものかと何十年でも待ちたい気持ちになりました。
村の方たちの手によって大事に守られ愛されてきた仏さまに、守ってこられた方と共にお会いできる素晴らしさは何にも代え難い幸せな時間でした。
仏像好きの最高の一瞬一瞬が中村地区にはありました。
満面の笑みでお地蔵さんへの愛を語る幸せそうな洞出さんと神秘的な子安地蔵。
リピーターが後を絶たないと仰っていた意味がわかります。


妖しく美しい魅力溢れる地蔵菩薩立像。
何度でも。
何度でもお会いしたいと心から強く強く思わずにはいられない仏像です。

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この記事へのコメント
来月、お地蔵さまに会いに伺います。
昨年そちらに伺い、お地蔵さまに魅了された方と一緒に伺います。
拝見させて頂ける事を有難く、また楽しみにしております。
昨年そちらに伺い、お地蔵さまに魅了された方と一緒に伺います。
拝見させて頂ける事を有難く、また楽しみにしております。
ODAさま
来月行かれるんですね!
本当に素晴らしい地蔵菩薩様で時間の流れが止まりますよ。
平安初期の造像されたころからの想いを馳せて下さい。
1000数百年の時の流れを感じることが出来る素晴らしい地蔵菩薩様です。
来月行かれるんですね!
本当に素晴らしい地蔵菩薩様で時間の流れが止まりますよ。
平安初期の造像されたころからの想いを馳せて下さい。
1000数百年の時の流れを感じることが出来る素晴らしい地蔵菩薩様です。
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URL :
- 酒井 - 2013年10月07日 11:23:13
近所の方々がお守りしている微笑ましさに、感動しました。
これからも、村の人たちをまもってくれるでしょう。