三重県・妙福寺「2体の金剛界大日如来と濃密空間の巻き」

三重県鈴鹿市徳居町(とくすい) 妙福寺。
こちらには重要文化財に指定された大日如来像が2体、釈迦如来坐像が1体お祀りされています。
平安時代後期の作で穏やかな像容でした。
階段を上り、山門をくぐると本堂が。
このお堂に濃密な仏像空間が広がっています。
重要文化財に指定された仏像、無指定の仏像など素敵な仏さまたちを見ていきましょう。

山門から見えるお堂というロケーションが好き

本堂

文化財掲示板
本堂に入れて頂くとギュッとつまった半丈六ほどの仏像群が目に飛び込みます。
秘仏本尊のお厨子の両脇に坐像の仏さまが2体ずつ。
薄暗い光量の中に安置される雰囲気は素晴らしいですね。

御本尊のお厨子を挟み両脇に2体のずつの坐像

御本尊お厨子向かって左手の2体

御本尊お厨子向かって右手の2体
まずはメインとなる2体の大日如来像。
平安後期の穏やかな体躯と衣紋。
2体共に智拳印を結びます。
この一見よく似た像容の大日如来のいわれは、京都の法勝寺(ほっしょうじ)の塔に安置されていた「四面大日」の2体ではないかと言われており、焼失を繰り返した法勝寺の塔より別れ別れとなった大日如来の2体が運命的に妙福寺に祀られている。
仮説の域を出ない説ではあるが、非常に魅力的なお話でご住職の語りに心がワクワクする。

大日如来坐像 平安時代後期 国重要文化財 ヒノキ材 寄せ木造り 像高151cm

大日如来坐像 平安時代後期 国重要文化財 ヒノキ材 寄せ木造り 像高148cm
上半身はシェイプされ下半身はどっしり、衣紋は浅く流麗、髻は非常によく似ている。
しかし体躯の雰囲気は向かって右の像は張りがあって左は緩やかな印象。
しかして結ぶ智拳印は左像は左手首を捻り手の平をこちらへ向けてくる。
似ているようで随所に違った趣向を凝らした造形は非常に見応えがあって面白いです。

左手の捻り手の平を見せる

オーソドックスに結ぶ印
髻の造形やお顔立ちは非常によく似ていますが、左の方がやはりふくよか穏やかで、右の方がシェイプされ張りがあるように見えます。
似ていて少しずつ違う造形は同仏所の造像でありながら、ノミを振るった仏師は別ということなのかなぁ。
いろいろ考えると面白いですね。

ふくよかで穏やかな尊容

シェイプされ張りのある尊容
そしてもう1体の重要文化財に指定された釈迦如来坐像。
こちらも平安後期の像で穏やかな優しい像容。
流れる衣紋の優しい美しさは平安後期像の絶大な魅力ですね。
深くゴリゴリな平安初期の衣紋も大好きですが、後期の美しい衣紋も好きです。
全体的に優しく穏やかで、少し前かがみか。
猫背気味に首が前に出て趺坐する像様は美しく落ち着きますね。
よく見ると、めっちゃイケメンなお釈迦様ではないでしょうか。
お顔を見ると力強く凛々しいお顔ですね。

釈迦如来坐像 平安時代後期 国重要文化財 ヒノキ材 寄せ木造り 像高109cm

顎がやや前に出て丸みな背中好き

各パーツが整って螺髪の粒も小粒でお洒落でカッコいい
平安時代の重要文化財と堂々と並ぶ無指定の聖観音坐像。
こちらの像も古く平安ではないかと思われるのですが文化財的には無指定。
修復の手が多いのか。
髻の高さなんかは不自然か?
全体的には上半身がシェイプされ下半身はどっしりな、堂内のお像と共通した雰囲気を持つ。
耳も非常に大きく、細かな造形もしっかりした見事なお像だと思います。

聖観音坐像 無指定

穏やかでありながらしっかりとした強さがある
また本来は秘仏で毎年8月の8日お薬師様の縁日からお盆にかけてご開帳される御本尊 薬師如来立像と阿弥陀如来立像のお厨子扉を開けて頂き、お姿を拝ませていただきました。
時代的にはいつ頃のお像になるのだろうか。
しっかりと全体的に金箔が残るお姿は江戸期を想起させますが、造形的に平安後期像だと期待してしまう。
非常によく似た、いやソックリな2体の如来像のご開扉はしびれるものがありました。

お厨子の扉を開けでくださるご住職

お厨子に並ぶ2体の如来像

薬師如来立像 無指定

阿弥陀如来立像 無指定
大日如来 聖観音坐像の後ろに並ぶ破損佛も魅力的ですね。
このあたりの仏像も見逃せない。

破損佛 無指定
仏像の素晴らしさ良さは文化財の指定無指定に関わらずあって、お参りしたメイン佛以外にも安置されている仏像に素晴らしいものが多くありますね。
もちろん、文化財に指定される仏像には指定されるだけの納得の素晴らしさがありため息。
妙福寺には指定無指定に関わらず、非常に優れた美しい仏像が密集する空間でした。
薬王山 妙福寺
三重県鈴鹿市徳居町2040
TEL : 0593-72-1261
宗派 : 真言宗
御本尊 : 薬師如来 阿弥陀如来
拝観 : 要予約
拝観料 : 志納
駐車場 : 有り

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