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滋賀県・橘堂「三面六臂!妖し美し救いの観音菩薩の巻」

宝光寺ご開帳のお参りの次は橘堂ご開帳。

橘堂由緒書きによると、宝光寺創建の際に天皇より御髻の一部を拝受し本尊と共に安置したことから髻堂と呼ばれ(もとどりどう、きつどう→橘堂)現在は橘堂(たちばなどう)と呼ばれています。


室町年間に大内義興の兵火にかかり堂宇は失うものの本尊は救い出され、その後は吉田氏、白井氏の両家によって今日まで護り続けられてきました。



以前にもお参りした事があり、今回のご開帳で3度目のお参りとなりますが見飽きることのない美しさがあります。

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ご開帳の装い


橘堂の観音さまは三面六臂の珍しい観音さまです(頭上面を合わせると十四面像)。
三面六臂の観音さまと言えば馬頭観音像、天部像には阿修羅像もいらっしゃいますね。
これらの像の正面相は基本的にはみな憤怒の形相。
しかしこちらの観音さまは、儚げな美しさを感じる観音さまです。
三面六臂という異形像でありながら非常に美しく優しい観音さま。
興福寺の阿修羅像も三面六臂の儚い優しさの仏像で人気ですよね。



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三面六臂観音菩薩立像 市指定文化財 平安中期 ヒノキ材一木造り 像高107.2cm


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瞑想する双眸と印相


静かに瞑想する瞳と、胸の前で結ぶ印相の美しさがこの観音さまの儚げな美しさを際立たせているように思います。

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柔らかく結ぶ印の美しさ


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柔らかく結ぶ印の美しさ



印相の柔らかさが観音さまを際立たせているように思えます。
三面の内の正面が見つめる先に優しく結ばれる印相…
素敵過ぎる観音様ですね。

後補の部分が多い観音様ということですが、この印相が後補なのか当初からの造形なのか。
たとえ後補であったとしても、この観音様への憧れは変わらない。
衆生を救う厳しさ難しさ、それでも救おうとされる観音さまの慈悲と美しさがこの観音像には溢れていると思います。



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是非お会いして欲しい造形美


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橘堂(たちばなどう)
滋賀県草津市志那町
TEL : 077-561-2429(草津市教育委員会)
拝観 : 要予約
駐車場 : お堂前




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滋賀県・宝光寺「秘仏 薬師如来立像ご開帳!の巻」

8月11日。
帰省ラッシュ真っ只中のお盆にやって来たのは滋賀県草津市北大萱町の宝光寺。

宝光寺から徒歩圏内には仏像好きには有名な三面六臂の観音菩薩像がいらっしゃる橘堂があり、2年前にお参りさせて頂いた折に宝光寺の御本尊 薬師如来立像のご開帳がある事、橘堂の観音様も同時開帳されるとの情報を頂いておりました。(橘堂 通常は拝観には予約が必要)
ご開帳期間は8月9日〜13日という事で11日、佛友さんと集まりお参りをして来ました。


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ご開帳の山門



宝光寺は675年に天武天皇の勅願により僧定恵創建したと伝えられており、橘堂も同時に建立されています。
宝光寺 御本尊薬師如来立像のご開帳は33年に一度、ただし中開帳があるため15〜17年に一度お姿を拝むことが出来ます。(前回のご開帳は平成13年)


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宝光寺 本堂


ご開帳を広報するポスターで薬師如来立像のお姿は確認出来てはいましたが、厨子の中にいらっしゃる姿は想像以上の素晴らしさ。

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案内板によると素地で仕上げられた像高164cmのお像で天台密教の影響を濃く受けた平安初期の風格を伝える薬師如来立像。
体の量感や衣紋の彫りは落ち着きが出ていて中期に差しかかっているのかなぁと感じましたが、頬や顎の太さ、そして眼力から迫る威光が平安初期の力強さを残しているよう。
造形の落ち着きは感じるものの、このお像から感じるオーラは落ち着きとは真逆の、非常に力強いものを感じました。
これぞ秘仏の薬師!そう思わずに入られない迫力があります。


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薬師如来立像 国指定重要文化財 平安時代 像高164cm


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張りのある頬に太い顎、開いた双眸が威光を放つ


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下半身に行くほどに量感は抑えられ彫りも浅くなる


光背も独特で放射光は左右の下方にだけ伸び、初めて見る形式でした。
当初よりこの形で彫られた物なのかは不明ですが興味深いです。


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左右の下方に向けて伸びる放射光



本堂の隣には観音堂。
こちらには平安を感じさせる聖観音菩薩立像がいらっしゃいます。
文化財の指定は受けていないようですが、平安の中期頃と思える聖観音菩薩。
微笑まれているような優しげなお顔は、包み込んでくれる慈母の様な雰囲気がありました。
おそらく腕は後補なんだろうなと思いますが、その指先からも優しさが溢れている所作が観音さまの表情と重なり癒されました。


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観音堂


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聖観音菩薩立像 無指定


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微笑みを浮かべる様な優し尊容


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指先にも美しさと優しさが






瑠璃光山 宝光寺(ほうこうじ)
滋賀県草津市北大萱町594
TEL : 077-568-1520
宗派 : 天台宗
御本尊 : 薬師如来
拝観 : 秘仏(33年に一度、中開帳有り)




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地蔵盆2日目!怒涛の平安佛巡りの巻

元興寺地蔵会で購入したTシャツを着込み、24日は奈良〜大阪の平安佛をたっぷりと巡って来ました。

朝早くにJR奈良駅に再集合し、レンタカーで出発。
この日の1ヶ寺目は大和郡山市の西岳院。
実はこの西岳院、僕は6月の初めにお参りしていまして、千手観音菩薩立像のあまりの素晴らしさに佛友さんを是非とも連れて行きたいとこの日の予定に組みました。


一度お参りしているのにお寺の場所に迷うという失態をおかしながらも無事到着。
お堂の扉は開けられており外からもその大きなお姿が。
平安後期の千手観音菩薩立像は本当に素晴らしい。
これだけ大きな観音像がこの地にいらっしゃるのは本当に驚きでした。


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次も同じく大和郡山市。
八幡神社の観音堂に安置されている平安後期の十一面観音菩薩立像はなんと鉈彫り像。
東の方、特に東北地方に多いイメージですが、奈良にもいらっしゃるとは。
真夏の参拝は厳しい暑さで汗との戦いでもありますが、僕らのお参りを世話してくださった自治会長さんがクーラーをキンキンに効かせておいてくださり、気持ちよく拝観。
鉈彫りの跡を目を凝らし見てきました。


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念願叶い訪れることが出来た大安寺町の地蔵堂。
平安前期の地蔵菩薩立像を拝観させて頂きます。
頭部は彫り直しがされ穏やかなお顔となっていますが、体部は太く特にふとももの太さは見事。
平安前期の像ですが、特有のゴリゴリに衣紋が彫り込まれるというよりは穏やかさのある太い彫り。
本当にお会いしたかった地蔵菩薩さまのご縁をいただけて嬉しさが止まりませんでした。


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奈良での仏像拝観を終え向かったのは大阪の四條畷市の正傳寺。
とその前にお昼をいただきました。
奈良と大阪の県境にある「そば処 山の神」蕎麦好きな僕は佛旅の昼食に蕎麦をチョイスする事が多いです。
開店して間もない時間帯に到着出来たので店内はまだ混み合っていませんでしたが、僕たちがお店を出る頃には待ちが出るほどの人気店。
美味しいお蕎麦を堪能して正傳寺へ向かいます。



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大阪府四條畷市の正傳寺。
平安前期〜中期頃とされる異相の薬師如来立像を拝観。
この薬師如来もずっとお会いしたいなと思っていた方です。
佛友さんと巡れたことを非常に嬉しく思います。
そしてご住職のお話が面白い!
拝観される時は十分な時間を持って拝されることをオススメします。


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正傳寺を後にして交野市へ向かいます。
交野市の星田寺。
平安後期の十一面観音菩薩立像にお参り。
観音堂の扉はガラス扉となっていて普段からお姿を見る事は出来ますが、この日はお願いして扉を開けて頂き、凛としたお顔の十一面観音菩薩を拝観。
十一面観音にしては右手が短いなぁなどと思いながら。


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次に向かったのは某寺の薬師堂。
こちらには文化財的には無指定ではありますが、素晴らしい平安前期の薬師如来立像がいらっしゃいます。
後補の作り直しが多く、文化財的指定は受けていませんが、それでもその太さ造形は見逃せません。
お参り出来て良かった。


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毎年8月の地蔵盆に集まり、元興寺地蔵会と仏像巡りをしていますが今年の最後を締めくくるのは大阪府茨木市の蓮華寺。

地蔵盆の締めはやはり地蔵菩薩でしょう!
大阪市美で催された「木×仏像」展でこの方とお会いした時から絶対にお堂でお会いしたいと思っていた蓮華寺をこの日の締めの仏像として選びました。


堂々とした立派な地蔵菩薩像ですが傷みもあります。
応仁の乱の際に池に沈め隠されたそうで、その時の損傷が出ています。
しかし、その傷みがこの地蔵菩薩像の不思議な魅力を際立たせている様に思えます。

隣には鎌倉時代とされるくびれた腰を優美に捻る美しい十一面観音菩薩立像。
対比的な魅力を持つ地蔵菩薩と十一面観音菩薩の並びはいつまでもここに居たいと思わずに入られませんね。


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ざっとダイジェストでこの日の佛旅を振り返りましたが、記事を書きながらも、これだけ凄い仏像をよくも見てきたなと、振り返って驚いています(笑)
めちゃくちゃ濃い1日でした。
全てが順調に進み、予定の行程を終えて京都駅へ。
無事にレンタカーを返却し楽しみの打ち上げです!


この日の打ち上げは京都駅近、「チヂミの王様」です。
人生初マッコリを頂きましたが、いくらでも飲めちゃいますね♪
出てくる料理の量がハンパではなく、お腹ははち切れんばかりとなりました。
佛&食&酒。
全てが最高の1日でした。
ご一緒して下さった佛友さん、ありがとうございました!
さ〜て、来年の地蔵盆はどこを巡ろうかなぁ♪


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毎年恒例!8月地蔵盆は元興寺へ!の巻

8月の23、24日は奈良県元興寺の地蔵会万灯供養の日で、毎年佛友さんとお参りさせ頂き、この日販売される元興寺Tシャツを購入するのが恒例となっています。

今年もみんなで集まり楽しい2日間を過ごす事が出来ました。
そんな2日間をダイジェストでお伝えしたいと思います。




23日仕事休み組は朝の9時半、京都駅に集合し西国三十三所を巡りました。
と、その前に京田辺市のお寺を訪問。


まずやって来たのは京田辺市 来迎寺。
このお寺には平安前期とされる聖観音菩薩坐像が安置されています。
ふっくらとしたお顔に瞼もふっくら重い。
すーっと線を引いたような双眸は微笑まれているのか瞑想されているのか。


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来迎寺を後にし、ここから西国巡礼。
明日香へと走りまずは七番札所 岡寺へ。
仏前勤行次第、御本尊真言を唱えさせて頂きお参り。
1人で巡る時はなかなか出来ないので貴重な体験。
早く般若心経をそらで言えるようになりたい。


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昼食をと思っていたお店が残念お休みで、次の目的地の第六番札所南法華寺へ向かう事に。
大きな目の十一面千手観音菩薩坐像。
境内のつぼさか茶屋でお昼を食べて次へ向かいます。



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桜井市へと向かい番外札所の法起院、第八番札所 長谷寺へ。
法起院の境内には葉書の由来となった多羅葉樹が。
葉の裏に文字が書かれていました♪
ん〜素敵ですね。



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久しぶりにやって来ました長谷寺!
大きな御本尊 十一面観音菩薩立像はやっぱり凄い。
境内の見晴らしも素晴らしい。
しかしその道のりでバテバテの我々は大汗をかきながら息を切らし般若心経を唱えるのでした…


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ここから京都駅へと戻り、マイカーからレンタカーへと乗り換えて仕事終わりの佛友さんと合流。
8月23日の夕方1時間しか開かない、日本に一体しかいないと言われる六臂の地蔵菩薩さまに会いに行きます。

智恵光院 地蔵堂に安置される地蔵菩薩さまはなんと腕が6本。
死後に転生するとされる六つの世界「地獄道」「餓鬼道」「畜生道」「修羅道」「人道」「天道」のすべてを救う力を一体に込めて、小野篁が作ったと伝えられています。
TV見仏記で見てずっと会いたかった地蔵菩薩さまにようやくお会いする事が出来ました。


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そして再び奈良へと向かい元興寺地蔵会へ。
毎年販売されるTシャツ、この年のカラーは何色だ?!とワクワクしながら元興寺へ。
昨年は危うく売り切れてしまうところだったので、今年はしっかり予約をして安心して購入いたしました。
予約してまで購入しているのは多分我々だけじゃないかな(笑)


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そしてこれも毎年恒例、打ち上げはビストロ中華のへいぞうさん。
とにかく美味い。
何を食べても必ず大満足。
地蔵盆とへいぞうさん。
鉄板のコースですね。


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さて、翌24日は1日平安佛を巡ります。
奈良〜大阪の平安佛をたっぷりと巡って来ましたのでお楽しみに!
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京都府 ・福知山市安養院 33年に一度のご開帳の巻

5月5日、福知山市安養院 十一面観音菩薩立像ご開帳へお参り。

世間は5月GW、そんな中仕事をしていた僕は少し現場を抜け出し、4月29日より一週間にわたりご開帳された京都府福知山市安養院の十一面観音菩薩立像を拝してきました。


ご開帳は実に33年振り!
文化財的には無指定ではありますが、平安期の素敵な十一面観音菩薩立像でした。
京都府という立地でなければ、とっくに文化財指定を受けていておかしくはない観音様。


福知山市で仕事をしながら、恥ずかしくもその存在を全く存じ上げなかった観音様に一目会いに愛車を走らせ安養院へ向かいました。


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ご開帳期間も明日までと迫る5月5日、境内には僕と入れ替わるように安養院を後にされた老夫婦だけ。
僕がお参りしている間は誰もいらっしゃらず、観音様を独占させて頂きました。



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平安後期のお像かと思いましたが、お顔は木目もあってか おっとりとした優しさよりはやや厳しめな印象を受けました。
しっかりとした意思があるような。
腰から折り返す裳はVの字となり平安後期の表現を思わせますが、衣紋の彫りは太さがあり衣は足元まで重みがあってまだまだ古風な雰囲気を残していました。



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手の甲をこちら側に見せ、腫れたように大きな右手から伸びる五色の紐。
ご開帳の風景をしっかりと味わい噛み締めながら、しばらくの時間、じっと観音様と向き合わせて頂きました。


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文化財指定の有無とは関係なく、美しい観音様はまだまだたくさんいらっしゃるんだな。
村の観音様を大切に守り続ける方々にとって、“財”という価値ではない“想い”の詰まった十一面観音菩薩さまを静かにお参りさせて頂き、安養院を後にするのでした。







長澤山 安養院
京都府福知山市猪野々50
TEL : 0773-33-2168
宗派 : 真言宗御室派
御本尊 : 十一面観音菩薩
拝観 : 秘仏
駐車場 : 有り
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プロフィール

迦楼馬-カルマ-

Author:迦楼馬-カルマ-
仏像の美しさに感動して以来、ひたすらに仏像拝観に明け暮れる四十路街道を走る男の拝観日記。
仏像拝観歴は非常に浅いので間違いも多々あり!日々精進でございます。
僕自身が見て感じた仏像観を記していますので美術史的、仏教学的に誤っていることが多々あると思ので、その時はご教授ください。



訪れた寺社の全てを記事にするととても追いつかないので佛旅速報でまかない本編記事はピックアップという形になっていきます。

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