マニアック平安佛!和歌山県博「有田川中流域の仏教文化」展の巻
2017年
博物館や美術館で仏像が多数展示される展覧会が数多く開催される事が昨年より話題に上がっておりました。
西(奈良博)で”快慶”、東(東博)で”運慶”をはじめ、
・高月観音の里歴史民俗資料館
特別陳列 本尊を取り巻くホトケたち-脇役たちの輝き- 1月25日~3月12日
・滋賀県立安土城考古博物館
企画展 大湖南展-粟太・野洲郡の風土と遺宝- 2月25日~4月9日
・太子町立歴史資料館
企画展 斑鳩寺の文化財 庫裏の仏さまたち 2月11日~4月9日
・三井記念美術館&あべのハルカス美術館&山口県立美術館
創建1250年記念 奈良 西大寺展-叡尊と一門の名宝-
4月15日~6月11日、7月9日~9月24日、10月20日~12月10日
・大阪市立美術館
木と仏像-飛鳥仏から円空へ 日本の木彫仏1000年 4月8日~6月4日
僕が注目しているだけでも年明け早々にこれでもかと催しが決まっています。
その中で、今回は和歌山へ行ってきました!
仏像展目白押しの2017年の幕を開けるに相応しい素晴らしい展覧会が和歌山県立博物館で開催されております。
企画展 「有田川中流域の仏教文化」展
会期 1月21日~3月5日

重要文化財に指定される有田川二川の安楽寺多宝塔小塔修理完成記念として、安楽寺のある有田川中流域に伝わる仏教文化にスポットを当てた企画展です。
会期に時間がありません。
展覧会の概要等を僕のブログに期待する方もいないでしょう。
僕のブログを訪れて下さる方はきっと仏像の情報を知りたい方が大半を占めると思われますので、色んな物をすっ飛ばして展示順なんかも抜きに私的注目佛をどんどん紹介したいと思います。

湯川川流域で新たに発見された平安佛、二天立像
湯川川流域で新たに確認された平安佛が展示されています。
新たに確認された-。湯川川流域で最古となる二天像-。
このフレーズに心踊らない仏像好きがいるでしょうか?いないでしょう!
量感ある立ち姿でありながらどこかコミカルな雰囲気も感じる二天像で、甲冑の彫り込みなどはなかなか細部まで彫られていて素晴らしいです。
二天像が間隔を空けて並ぶ空間は非常に見応えが有り、この二天像からはオーラが溢れ出ておりました。
目の飛び出し、ざっくりと彫られた邪鬼も惹きつけられるものがある。
また、火炎が描かれた板光背も雰囲気が合って素晴らしい。好きですねこういう光背は!

二天立像 無指定 平安時代中期 像高71.5cm 下湯川観音堂

二天立像 無指定 平安時代中期 像高73.2cm 下湯川観音堂

像の雰囲気ともよく合っており大好きな光背 当初からのもの?

表情、肉感、素晴らしい!
また、同じく湯川川流域 下湯川観音堂の阿弥陀如来坐像は大きく摩滅し、その尊様を著しく損なってはいますが、それでもなお気品あふれるイケメンぶりが伺えます。
後世の墨書ではありますが運慶の文字が。
もちろん運慶作ではないでしょう、しかし、平安後期の定朝様を見せながら小顔でやや遠くを見つめるような眼差しなどからは、力強さ、来たる鎌倉の匂いが感じられるように思います。

阿弥陀如来坐像 無指定 平安時代後期 像高44.4cm 下湯川観音堂

ゆったりとなで肩、大らかな体の上には力強さのある小顔

非常に格好良いお顔 イケメン!
ずらりと並ぶ法福寺像は圧巻。
観音菩薩像、地蔵菩薩像、吉祥天像に虚空蔵菩薩像。
像名の字面を眺めるだけでも興奮してくる仏像が列をなして展示されております。

太い顔で堂々とした体躯、下半身の衣紋は簡略化され浅彫りではありますが、右腕には旋転紋が見られ平安前期の匂いが残った地方佛ならではの魅力が詰まった観音様。

観音菩薩立像 町指定文化財 一木造り 平安時代10C 像高113.0cm

条帛の感じ、天衣の旋転紋に深く刻まれた三道など非常に好み
腹回りから太腿へ、肩から胸から流れ出す衣紋の流れが、太く深く彫られこちらも平安前期の匂いを多分に残す地蔵菩薩像。
胴体部の接写を見ているだけでワクワクしてしまいますね。
左腕の衣には先の観音像と同じく旋転紋が刻まれており、一具の像として造られたものである可能性も。

地蔵菩薩立像 町指定文化財 一木造り 平安時代10C 像高98.9cm

平安前期の地蔵菩薩といえばこのカットが見たい
観音菩薩像、地蔵菩薩像よりもさらに量感あるこの吉祥天像がまた素晴らしい。
体幹部の衣紋表現はあっさりとしているものの、両腕から垂れる衣の重さに衣紋のゴリゴリ感はたまらない。
更には旋転紋を両腕ともに内と外に2個ずつ彫り込み、仏師のこだわりをココに見ることが出来るように思います。
かなり好きな吉祥天像です。

吉祥天立像 町指定文化財 一木造り 平安時代9~10C 像高78.8cm

どっしりと垂れる衣の量感と旋転紋の厚み

反対から見てもどっしり 不規則に流れる衣紋もいいですね

結構 霊威的な鋭いお顔
さらにもう1体の地蔵菩薩像も目を引きます。
右肩をあらわにする偏袒右肩(へんたんうけん)に衣を身に付け、右手は袖を掴んで立つお姿は異様で妖艶。
左脇から斜めに横切るように流れる衣紋も珍しいですね。
昨年に「福井の仏像」展でお会いした高尾町薬師神社の薬師如来立像も左脇から衣紋が胴を巻き込むように流れていたのを思い出す。
右手で掴んだ衣の表現にもグッとくる。

地蔵菩薩立像 町指定文化財 一木造り 平安時代11C 像高98.9cm

斜めに動を横切る衣紋が美しい

グッとくる。 衣を掴み動きが溢れ出す
紹介した仏像以外にも、まだま、まだまだ たくさんの素敵な仏像が展示されています。
安楽寺蔵の大日如来坐像、阿弥陀如来坐像に観音菩薩立像。
法福寺には虚空蔵菩薩立像に菩薩形立像そして二天像なども。
町指定、無指定のマニアックな仏像がまだまだ展示されているこの「有田川中流域の仏教文化」展。
会期は今週末で終了。
ぜひこの土日に、仏像好きの方は訪れて欲しいです。
きっと満足されると思います!

安楽寺 大日如来坐像 法福寺 二天立像

松葉観音堂 菩薩形立像 西原観音堂 馬頭観音坐像
最後におまけ!!
いや、ここに注目される方もかなりいるはず邪鬼部!!
邪鬼を愛する皆様にお贈りする素敵な邪鬼たち。
目の飛び出た邪鬼、鉈彫り邪鬼に、摩滅具合が独特の魅力を出す邪鬼。
ここまで魅力的な邪鬼はなかなか見れないと思いますよ!

突出した目玉と唇 ユーモラスな表情に吸い込まれる

鉈彫りの邪鬼 今まさに現れ出て様とする邪鬼?!

摩滅の具合で悪魔的というか妖怪的なおどろおどろしさが出た邪鬼
和歌山県立博物館
和歌山県和歌山市吹上1丁目4-14
073-436-8670
「有田川中流域の仏教文化」展
会期 1月21日~3月5日

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博物館や美術館で仏像が多数展示される展覧会が数多く開催される事が昨年より話題に上がっておりました。
西(奈良博)で”快慶”、東(東博)で”運慶”をはじめ、
・高月観音の里歴史民俗資料館
特別陳列 本尊を取り巻くホトケたち-脇役たちの輝き- 1月25日~3月12日
・滋賀県立安土城考古博物館
企画展 大湖南展-粟太・野洲郡の風土と遺宝- 2月25日~4月9日
・太子町立歴史資料館
企画展 斑鳩寺の文化財 庫裏の仏さまたち 2月11日~4月9日
・三井記念美術館&あべのハルカス美術館&山口県立美術館
創建1250年記念 奈良 西大寺展-叡尊と一門の名宝-
4月15日~6月11日、7月9日~9月24日、10月20日~12月10日
・大阪市立美術館
木と仏像-飛鳥仏から円空へ 日本の木彫仏1000年 4月8日~6月4日
僕が注目しているだけでも年明け早々にこれでもかと催しが決まっています。
その中で、今回は和歌山へ行ってきました!
仏像展目白押しの2017年の幕を開けるに相応しい素晴らしい展覧会が和歌山県立博物館で開催されております。
企画展 「有田川中流域の仏教文化」展
会期 1月21日~3月5日

重要文化財に指定される有田川二川の安楽寺多宝塔小塔修理完成記念として、安楽寺のある有田川中流域に伝わる仏教文化にスポットを当てた企画展です。
会期に時間がありません。
展覧会の概要等を僕のブログに期待する方もいないでしょう。
僕のブログを訪れて下さる方はきっと仏像の情報を知りたい方が大半を占めると思われますので、色んな物をすっ飛ばして展示順なんかも抜きに私的注目佛をどんどん紹介したいと思います。

湯川川流域で新たに発見された平安佛、二天立像
湯川川流域で新たに確認された平安佛が展示されています。
新たに確認された-。湯川川流域で最古となる二天像-。
このフレーズに心踊らない仏像好きがいるでしょうか?いないでしょう!
量感ある立ち姿でありながらどこかコミカルな雰囲気も感じる二天像で、甲冑の彫り込みなどはなかなか細部まで彫られていて素晴らしいです。
二天像が間隔を空けて並ぶ空間は非常に見応えが有り、この二天像からはオーラが溢れ出ておりました。
目の飛び出し、ざっくりと彫られた邪鬼も惹きつけられるものがある。
また、火炎が描かれた板光背も雰囲気が合って素晴らしい。好きですねこういう光背は!

二天立像 無指定 平安時代中期 像高71.5cm 下湯川観音堂

二天立像 無指定 平安時代中期 像高73.2cm 下湯川観音堂

像の雰囲気ともよく合っており大好きな光背 当初からのもの?

表情、肉感、素晴らしい!
また、同じく湯川川流域 下湯川観音堂の阿弥陀如来坐像は大きく摩滅し、その尊様を著しく損なってはいますが、それでもなお気品あふれるイケメンぶりが伺えます。
後世の墨書ではありますが運慶の文字が。
もちろん運慶作ではないでしょう、しかし、平安後期の定朝様を見せながら小顔でやや遠くを見つめるような眼差しなどからは、力強さ、来たる鎌倉の匂いが感じられるように思います。

阿弥陀如来坐像 無指定 平安時代後期 像高44.4cm 下湯川観音堂

ゆったりとなで肩、大らかな体の上には力強さのある小顔

非常に格好良いお顔 イケメン!
ずらりと並ぶ法福寺像は圧巻。
観音菩薩像、地蔵菩薩像、吉祥天像に虚空蔵菩薩像。
像名の字面を眺めるだけでも興奮してくる仏像が列をなして展示されております。

太い顔で堂々とした体躯、下半身の衣紋は簡略化され浅彫りではありますが、右腕には旋転紋が見られ平安前期の匂いが残った地方佛ならではの魅力が詰まった観音様。

観音菩薩立像 町指定文化財 一木造り 平安時代10C 像高113.0cm

条帛の感じ、天衣の旋転紋に深く刻まれた三道など非常に好み
腹回りから太腿へ、肩から胸から流れ出す衣紋の流れが、太く深く彫られこちらも平安前期の匂いを多分に残す地蔵菩薩像。
胴体部の接写を見ているだけでワクワクしてしまいますね。
左腕の衣には先の観音像と同じく旋転紋が刻まれており、一具の像として造られたものである可能性も。

地蔵菩薩立像 町指定文化財 一木造り 平安時代10C 像高98.9cm

平安前期の地蔵菩薩といえばこのカットが見たい
観音菩薩像、地蔵菩薩像よりもさらに量感あるこの吉祥天像がまた素晴らしい。
体幹部の衣紋表現はあっさりとしているものの、両腕から垂れる衣の重さに衣紋のゴリゴリ感はたまらない。
更には旋転紋を両腕ともに内と外に2個ずつ彫り込み、仏師のこだわりをココに見ることが出来るように思います。
かなり好きな吉祥天像です。

吉祥天立像 町指定文化財 一木造り 平安時代9~10C 像高78.8cm

どっしりと垂れる衣の量感と旋転紋の厚み

反対から見てもどっしり 不規則に流れる衣紋もいいですね

結構 霊威的な鋭いお顔
さらにもう1体の地蔵菩薩像も目を引きます。
右肩をあらわにする偏袒右肩(へんたんうけん)に衣を身に付け、右手は袖を掴んで立つお姿は異様で妖艶。
左脇から斜めに横切るように流れる衣紋も珍しいですね。
昨年に「福井の仏像」展でお会いした高尾町薬師神社の薬師如来立像も左脇から衣紋が胴を巻き込むように流れていたのを思い出す。
右手で掴んだ衣の表現にもグッとくる。

地蔵菩薩立像 町指定文化財 一木造り 平安時代11C 像高98.9cm

斜めに動を横切る衣紋が美しい

グッとくる。 衣を掴み動きが溢れ出す
紹介した仏像以外にも、まだま、まだまだ たくさんの素敵な仏像が展示されています。
安楽寺蔵の大日如来坐像、阿弥陀如来坐像に観音菩薩立像。
法福寺には虚空蔵菩薩立像に菩薩形立像そして二天像なども。
町指定、無指定のマニアックな仏像がまだまだ展示されているこの「有田川中流域の仏教文化」展。
会期は今週末で終了。
ぜひこの土日に、仏像好きの方は訪れて欲しいです。
きっと満足されると思います!


安楽寺 大日如来坐像 法福寺 二天立像


松葉観音堂 菩薩形立像 西原観音堂 馬頭観音坐像
最後におまけ!!
いや、ここに注目される方もかなりいるはず邪鬼部!!
邪鬼を愛する皆様にお贈りする素敵な邪鬼たち。
目の飛び出た邪鬼、鉈彫り邪鬼に、摩滅具合が独特の魅力を出す邪鬼。
ここまで魅力的な邪鬼はなかなか見れないと思いますよ!


突出した目玉と唇 ユーモラスな表情に吸い込まれる


鉈彫りの邪鬼 今まさに現れ出て様とする邪鬼?!

摩滅の具合で悪魔的というか妖怪的なおどろおどろしさが出た邪鬼
和歌山県立博物館
和歌山県和歌山市吹上1丁目4-14
073-436-8670
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