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三重県・心證寺「これぞ地方佛!その地の匂いがかおる薬師如来像の巻き」

10月4日に仏像LINKツアーに参加させていただき巡った心證寺(しんしょうじ)。
こちらのお寺では心にグッとくる薬師如来に出会いました。
この日のツアーの模様は速報記事へ!


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真新しいお堂へと案内され開かれた扉の中から現れた。(現れるわけではない。お薬師様はずっとここに変わらずいらしてる byみうらじゅん&いとうせいこう)
飛び込んできた薬師如来像は土の香りがするような、その土地の香りがただよってくるような方でした。
豊満な丸顔に大きな鼻ととてつもなく大きな耳が。
それに比しては小さめなお口がなんとも愛らしさを感じさせ、より地方色を感じさせてくれるような気がします。


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肩口から太い彫り口でお腹へと流れていく衣紋の力強さは武骨ながらも密に刻まれ、時の地方仏師が薬師如来の現世利益の力を表そうと深く力強く彫り込んだように思え、たまらなく心に来ました。
ゴリゴリに刻まれる衣紋はいいですね。
そう言えば大きすぎるばかりの福耳も、もしかしたら御利益を表す意味があったのかな。


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ご本尊の薬師如来像は修復を受けておられるのですが、その前後のお姿が堂内には飾られていました。
武骨ながらも力強く流れた衣紋はただれる様に途切れ勢いを失くしていましたが、修復によりその勢いを取り戻し僕たちは素晴らしいお姿を拝むことが出来ているんですね。
指をピーンと伸ばし薬壺を持つ左手先も可愛かったなぁ。


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脇にいらっしゃった鼻の潰れた不動明王立像はかなりの佛友さんの心を捕えていたように思います。
かなりの朽ち具合でありながらも修復されている状況を見るに、大切に愛されてお祀りされてきたんであろう時間の流れが見えるような気がしました。
対にいらっしゃった聖観音立像や、時代的には新しいであろう胎蔵界大日如来像も美しく素晴らしかったな。
何度でも訪れたい心證寺。
以前に訪れたことがある佛友さんが、ずっと再開したかったお薬師さんなんですと心を込めて仰ってた気持ちが非常に良く分かります。


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心證寺(しんしょうじ)
三重県伊勢市楠部町2012-1
TEL : 0596-22-7884(伊勢市教育委員会 文化振興課)
拝観 : 要予約
拝観料 : 志納
駐車場 : 無し

















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岡山県・勇山寺「力強くユーモアで可愛らしい 不動三尊像の巻」

昨年の11月5日、岡山県真庭郡にある勇山寺を訪れました。
この日巡った1日の速報記事はこちら

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真言宗高野山派の古刹。
創建は奈良時代726年(神0亀3年)、聖武天皇の勅願により行基菩薩によって開基されたといわれています。
六尺五寸の薬師如来を彫り七堂伽藍を創定。
815年(弘仁6年)に弘法大師がこの地を訪れ不動明王、矜羯羅童子、制吒迦童子を厄難除けのため一刀三礼の元に彫りあげ安置する。


本尊の薬師如来、不動明王と二童子像は国指定の重要文化財、本堂は真庭市の文化財に指定されています。

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この日はあいにくご住職は不在で檀家総代さんに対応いただきお目当ての不動三尊像を拝観させて頂きました。
ご本尊の薬師如来坐像は秘仏であり33年に1度の開扉、次回扉が開かれるのは平成45年となります。
肩幅広く逞しい、お写真からは太さを感じる方。
実際にお会いするとどんな印象を受けるのか、ご開帳が楽しみですね。


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勇山寺 由緒書きより



さて、今回拝観させて頂きました不動三尊像は、一目見てその特徴的なお顔に引きつけられずにはいられない、どこかユーモアであったり、真逆の怖さを感じたりもする非常に特徴的なお顔をされた三尊です。

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中尊 不動明王坐像は像高187cm、ヒノキ材の一木造りで彫眼。
お顔は天地眼であり牙上下出で平安時代後期の作と考えられる像との事ですが、体幹の厚さや怒り肩、堂々とした力強さは初期の匂いも感じられるように思いました。
眉間から巻き上げる様に渦を巻く頭髪の表現や、背筋を反り返るほどにしっかりと伸ばして胸を張る姿勢、本当に堂々とされた不動明王様でした。


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不動明王座像 国指定重要文化財 ヒノキ材 一木造り 像高187cm 平安時代後期


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牙を噛み下げ、深く刻まれた巻き毛から垂れ下げる弁髪


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堂々とした胸と、剣を握る力強い右腕





脇に立つ二尊像の数多の経験を積んできた感があふれる矜羯羅、制吒迦両童子のドヤ感。
もはや童子とは呼べないような貫禄があふれています。
どちらも不動明王像と同じく、ヒノキ材の一木造り。
像高は矜羯羅童子151.3cm、制吒迦童子144.3cm。
スッと立ち蓮の花を優しく持つ完全におばさんな制吒迦童子と、腰を捻り肘を内に入れやや窮屈な感じにも見える様に力強く立つおっさんな矜羯羅童子。
これほど引きつける矜羯羅、制吒迦両童子にはそうそう出会えませんね。


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矜羯羅童子 国指定重要文化財 ヒノキ材 一木造り 像高151.3cm 平安時代後期

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制吒迦童子 国指定重要文化財 ヒノキ材 一木造り 像高144.3cm 平安時代後期

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拝観後にはお茶菓子のおもてなしを受け、肌寒いこの日の朝にほっこりとした温かさを頂いて勇山寺を後にするのでした。
静かな静かな境内に他にないような尊容を見せて下さる不動三尊像を堪能しさせて頂きました。


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大寺山 勇山寺(いざやまじ)
岡山県真庭郡落合町鹿田482
TEL : 0867-52-0454
拝観 : 要予約
拝観料 : 志納
駐車場 : 無し









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福井県・諦応寺「樹齢450年に刻まれた驚きの立木佛の巻き」

速報記事が続きましたが、本編記事へと戻ります。
仏像LINKツアーで若狭小浜を巡ったツアー最終地は諦応寺(たいおうじ)。


こちらには県の文化財に指定された平安前期の作となる薬師如来立像が収蔵庫に安置されるのと、もう一つ素晴らしい観音様がいらっしゃいます。
樹齢450年ともいわれる銀杏の木に彫りだされた”立木佛”という銀杏観音像です。
驚くべきそのお姿に言葉を失くすのでした。


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諦応寺は1506年(一説には1501年)室町時代の創建されたと伝わり、開山は丹波篠山 円通寺の順翁慶随和尚(じゅんのうけいずい)で曹洞宗のお寺。
収蔵庫に安置される薬師如来立像は、諦応寺創建以前にあったと伝えられる天台宗か真言宗の寺院のものと思われるそうです。


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参道の石段を登っていくと見えてくる大銀杏。
その立木佛のお姿を見て驚きのあまり「マジか!?」と叫んでしまう。
そしてその後は言葉が続かずポカーンと口を開けて目を見開いてただただ眺めいってしまいました。
ひょっとしたら呼吸も止まっていたかもしれないと思えるほどに驚いた。
諦応寺の30世ご住職 仏山恵隆和尚が彫りだしたと云い伝えられ、胸の窪みには経典が収められていたそうで現在は取りだされているのかな?蓋のみとなっております。
非常に力強く太く彫りだされており、よくぞ彫り出せたものだと感心するばかり。
また、観音様が彫り出されながらも銀杏の木は生きており、その生命力は観音様を通しても見事に感じることが出来ます。


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収蔵庫にいらっしゃる薬師如来立像は像高156cm等身大の方で、ケヤキ材の一木造り。
どっしりとした一木の量感と素朴でありながら力強いお顔と、胸のあたりに見られる渦紋など平安前期から中期の作風が見られるそうです。
お顔の方は幕がかかり、やや見辛さはありましたが覗き込むように見るとその全体像が見て取れます。
全体的にやや磨滅感があり、手先などは後補であろうとは思いますが訪れる価値ありの非常に魅力的なお薬師様でした。


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城谷山 諦応寺(たいおうじ)
福井県三方上中郡若狭町安賀里33-1
TEL : 0770-62-0864
拝観 : 要予約
拝観料 : 志納
駐車場 : 有り








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迦楼馬-カルマ-presents 佛旅Vol.4 in多摩仏像研究会 PMタイムテーブルの巻き

午前中に橘堂→東門院→佛性寺→佛法寺と巡り、本来であれば昼食に湖南市の「みくりやうどん」さんでエビ天エビフライがドーーン!っと乗ったエビ天エビフライカレーうどんを食べたかったんですが、東門院さんで非常に貴重な時間を過ごしすぎて昼の時間が。。。佛旅幹事として未熟な面がモロに出てしまいましたー。やっちゃったなぁ。
とりあえず、昼1番目のお願いをしていた正福寺へと向かいます。


湖南市に所在する正福寺は聖武天皇の勅願により良弁上人が開山したと伝わる寺院でご本尊は胎蔵界大日如来像。
度重なる兵火により堂宇は焼失したもののご本尊を含め多くの仏像はその難を逃れています。
本尊は秘仏であり30年に1度のご開帳との事ではありますが、ご住職曰くは、ご開帳の体制を整えることが難しく、今のところ公開の予定が立っていないとの事でした。
いつの日かお姿を拝みたいものです。
とは言えです!観音堂に並び立つ4体の十一面観音菩薩、薬師如来坐像、地蔵菩薩半跏像の横一列の情景は圧巻で、ここ何時間でもいれる。
平安期の仏像がズラリと並び立ち中でも中尊の十一面観音菩薩立像は最も時代が下る像で、像高も最も大きく衣紋の彫りも表情豊か。
また、脇に並ぶ十一面観音菩薩立像もそれぞれが美しく、体躯の太い方や細い方、正面から見るお姿と横から(斜めから)眺めるお姿の変化に右に左に行ったり来たり。
半跏地蔵の鎌倉期の匂いもしてくる凛々しいお姿も素晴らしいし、衣紋表現が大雑把なような細部に気を使っているような、柔らかくて固いような眺めていて本当に見飽きない薬師さんでした。


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善水寺。
今回のメインである善水寺のご開帳で、ご本尊の薬師如来様のお姿を拝みにやって参りました。

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ふっくらとした優しいお顔をされていて、写真で見るよりも全然優しさを感じる方。
施無畏印の指もふっくらぷにぷに。
お顔も体も指先までも太く優しく、お姿全身で慈悲の優しさを表現されているようでした。
思いの外大きくはない方でしたが、数多くの仏像が密集した空間にあり、どの方よりもオーラが半端ないまさにご本尊。
この方あっての善水寺本堂なんだなと感じました。

しかしだからと言って見過ごせないのが、脇に並ぶ方々で見事な四天王像や梵天帝釈像は圧巻。
特に梵天像の衣紋は凄かったなぁ。
肩から腕へ、腰から腿へ裾へと流れゆく衣紋や渦紋など素晴らしきかな。
本堂裏手にも佛の大洪水でご開帳の時期でなくとも、凄い勢いでした。

そして善水寺の湧き水を頂戴し、焼酎を割って飲みましたが美味しさが増し増しで酒飲みにはそこもたまらないですね(笑)
佛友さんから聞くところによると、この水で米を炊くとめちゃめちゃ旨いとか。

写真は善水寺HPで。




善水寺を後にし、ようやくお昼をセブンイレブンで。。。
ようやくお昼をセブンイレブンで。。。こんなはずではなかった(´・ω・`)


そして向かったのは金胎寺。
本堂には阿弥陀如来坐像を中尊に観音勢至両菩薩、そして二天像を脇に配する、言葉を飲み込んでしまう美しい空間でした。
それぞれのお像の造形ももちろん美しく見事である事は間違いないのですが、それよりもこの空間に惚れ惚れとしてしまいました。
中尊の阿弥陀如来は気高く伏し目がちで、優しくもあり力強くもあり。
脇侍の観音勢至菩薩は鼻が大きく素朴でありのんびりとされたお方。
そして二天像のダントツのカッコ良さ。
表情も力強く甲冑の造形も少ない彫り込みながら細部までしっかりと美しく仕上げられ素晴らしい。
外陣よりの拝観ではありましたが、凄かったなぁ。


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そして帰り際にご住職が、参道の石段の下からお堂を見上げると開いたお堂の扉の空間にちょうど弥陀様のお顔が合うのでどうぞ見て帰って下さいと。
しばらくの間はお堂を開けておきますのでじっくり拝んで帰って下さいねと仰って頂きました。
石段を振り返りながら下って行き、ときおり振り返る。
すると浄土かと見紛う風景がそこにはありました。
石段の上の方では見えるのは阿弥陀様のお体ですが、下へと進むにつれお顔が見えるように。
お参りさせて頂いた一同は感動の声を上げるのでした。


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もう1寺巡りたいなと考えておりましたがここでタイムアップ。
ドタバタと慌ただしくめぐる事になった今回の佛旅でしたが、巡ることが出来た仏像はどれも素晴らしく非常に充実した一日となったと思います。
善水寺では、ばったり出会った佛友さんとみんなで集合写真も撮れて嬉しかった!
反省点も多々ありましたが、素敵な一日になったんじゃないかなと思います。










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プロフィール

迦楼馬-カルマ-

Author:迦楼馬-カルマ-
仏像の美しさに感動して以来、ひたすらに仏像拝観に明け暮れる四十路街道を走る男の拝観日記。
仏像拝観歴は非常に浅いので間違いも多々あり!日々精進でございます。
僕自身が見て感じた仏像観を記していますので美術史的、仏教学的に誤っていることが多々あると思ので、その時はご教授ください。



訪れた寺社の全てを記事にするととても追いつかないので佛旅速報でまかない本編記事はピックアップという形になっていきます。

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