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奈良県 ・ 阿日寺「魅惑の大日如来像の巻」

凛々しく最高に男前な十一面観音像を後にし次の目的地は香芝市の阿日寺。
メインテーマの宿院仏師の次の拝観は夕刻となるので前回大福寺を訪れた時は拝観が叶わなかった阿日寺を次こそはとお願いして拝観の許可を頂きました。


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阿日寺は恵心僧都源信の生誕の地として知られ、源信が母の為に阿弥陀如来を父の為に大日如来を祀ったことから阿日寺と呼ばれるようになったとのことです。
通称「ぽっくり寺」とも呼ばれ親しまれています。

さて本尊の阿弥陀三尊像ですが中尊と脇侍には制作年代に隔たりがあるように感じました。
中尊の阿弥陀如来は平安後期くらいなのかなぁ?脇侍は江戸期くらいか。
このあたりの細かな鑑定眼などもちろん持ち合わせていない僕にははっきり分かりませんが(^^;
常々間違いなことばっかり書いてますからねぇ~(笑)
初心者なので許してください。

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阿弥陀如来は量感があり簡素化された穏やかな衣紋表現で慈悲深さがよく現れていて来迎形式の中尊として素晴らしく、脇侍の観音勢至像は頬をふっくらとさせた勢いを感じさせる像でした。
正面には恵心僧都像が座し独特な空間がそこにはあります。


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向かって右手側に平安中期の一木造り 胎蔵界大日如来坐像がいらっしゃいます。
国の重要文化財に指定されていて像高は94cm。
スラリと胴が長くバレリーナのような腕で定印を結びます。
スラリとした上半身とは違い量感のある下半身は力強く、大きなカットの衣紋表現は好きです。
そしてなんと言ってもその尊容でしょう。
しっかりと刻まれた首の三道の上にニヒルに笑みを浮かべたような独特な表情をされています。
一度お会いすれば二度と忘れることのない非常に特徴的なお顔で、見る角度によって肉付き感が違って見えたり表情を変えて下さる尊容です。
艶かしいというか妖しいというか凄く密教感を感じさせてくれる美仏でございます。


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他にも大日如来の脇に厨子入りの地蔵菩薩半跏像がいっらしゃりこちらも非常に美仏。
鋭い眼差しと力強い体躯が男性的な雰囲気を発散し、半跏した姿や両足の親指の上げ具合など動きに富み 勢いが半端ないです。
また衣に施された文様も美しく素晴らしい。


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本尊向かって左には法然上人&善導大師像もいらっしゃいます。


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また、外陣と内陣を区切る欄間には二十五菩薩来迎像があしらわれており非常に見応えのある空間。
お堂全体が発する空気感が凄く素晴らしい時間を過ごすことが出来ました。
ん~これは何度でも訪れたくなる素晴らしい空間でした。


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参門の小脇にあるお堂もお見逃しなく。
中には素敵な如意輪観音(聖観音?)の石仏がいらっしゃいます。

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阿日寺
香芝市良福寺361   
TEL : 0745-76-5561






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奈良県 ・ 大福寺「宿院仏師の最高傑作の巻」

2月28日。

地元奈良の古仏巡りである。
最初の目的地となったのは広陵町の大福寺さん。


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聖徳太子の建立と伝えられ当時は東大福寺、西大福寺と存在したが現在は西寺のみ。
本堂は江戸時代中期の建築で本尊は薬師如来坐像(江戸時代)
客仏に1560年箸尾殿御立願による南都宿院仏師作の十一面観音菩薩および難陀竜王・雨宝童子や鎌倉期の不動明王立像を安置。

御本尊 薬師如来坐像の台座にはごくごく最近の十二神将がずらり。
30cmないくらいの色彩されていない小さなお像ですが非常に愛らしくかっこよくじっくり見たくなる十二神将です。
しかし、今回こちらの大福寺さんへ拝観予約をして見に来たのは室町期の十一面観音立像。
錫杖を持つ長谷寺式と言われる十一面なんですがそれだけではなく、脇侍に難蛇龍王、雨宝童子を従える長谷寺の十一面三尊形式と同じ三尊で安置されています。

十一面観音菩薩と難蛇龍王の像内に墨書があり宿院仏師の源次、原三郎、源四郎、源五郎一門総出の造仏だそうで宿院仏師の最高傑作だとか。
今回の仏像巡りのテーマは宿院仏師!
室町期を彩る色気あふれる造仏をした仏師集団です。

いきなりメインとなるであろう大福寺を訪れたのは以前訪れた折にご住職(尼さん)より、お堂に太陽が差し込む午前の拝観が一番望ましいと教えて頂いていたから。
しっかりと陽の光が入り込んだ堂内は非常に明るく最高の拝観環境でした。

三尊とも素地造りで色彩がほとんど施されていなく木目の美しさを最大限に引き出した非常に美しい仏像でした。
木目が非常に美しく肉の張り、衣を押し上げる量感などが見事に表現され息を殺して魅入ってしまいました。
十一面観音は若々しく意思の強い表情をされ雨宝童子は穏やかで明るい表情。
木目で与える表情の印象を変えます。

また彫りだけではなく木目の流れをそのまま衣紋の流れとした素晴らしい造形美で、元々は大工業をされていた宿院仏師は木の選出眼に優れていたというお話にもしきりに頷くばかり。

色彩を施された仏像は誤魔化しがきくが、素地作りは誤魔化しが効かない 経年劣化にも強く歪みや欠落が少ないという話も聞くことができました。
なるほど欠落や剥落といった歪みを全く感じない造仏当時のまま年を経た美しさを感じさせてくれる美仏でした。

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今回 仏像の写真に関してはお願いするのをやめました。
というのも絵葉書を作る予定はないのか訪ねたところあるとの事。
3年越しで計画中とのことでした。
というのもやはり絵葉書を求める声が多く写真撮影のお願いをされることもしばしばだとか。
許可をすると撮影する分にはいいのだけれど、写真に夢中になりすぎて周りの法具を倒したり仏像に触れたりする方がいらっしゃるとか。。。
非常に残念な話です。。。
てなわけで今回は撮影のお願いをすることが恥ずかしくなり我慢しました(^^;
でも絵葉書が出来上がった時には送ってくださると言って頂きましたので楽しみに待つこととします!



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大福寺
奈良県北葛城郡広陵町的場80
TEL : 0745-56-5484







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京都府 ・ 龍谷ミュージアム「多田寺の名宝展の巻」

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さて最終目的地は龍谷ミュージアム。
現在「若狭・多田寺の名宝展」が開催中で、昨年から特別公開ツアーなんかも始まり俄然仏像熱が盛り上がりを見せる若狭より多田寺の仏像群がお出ましです。

地方古仏の宝庫である近江にも負けない美仏、古仏の宝庫である若狭地方。
仏像好きならば入り浸りになりたいはず。
その若狭地方の中でも特に古仏色の強い多田寺の薬師三尊がお出ましとなり しかも周辺仏までも引き連れて京都へ攻め入って来るとあれば行かないわけないでしょ!

会場は素晴らしいライティングで集まった若狭古仏を照らし出します。
このブログでも何度か言ってはいますが仏像はお堂で拝観するのが一番素晴らしい。
しかし、しかしである。
ミュージアムもやっぱいいなぁ(^^)
360°明るい照明の元隅々まで気の済むまで見ていられるのはお堂では味わえない良さです。

さて仏像である。
やはり一際目立ち惹きつけるのは多田寺のご本尊である薬師三尊立像。
それぞれ造仏年代は違い日光月光とされている像も十一面観音であったり聖観音であろうと思われる像でその尊容もそれぞれが非常に特徴的でこれぞ地方古仏といった風貌。
これですよねえ~地方仏にお会いしに行く楽しみは。
この独特の表情であったり特異さであったり無骨さであったり言葉は悪いですが稚拙さであったり。
この”味”といえる独特の風味は中央仏ではなかなか味わえません。

中尊の薬師如来の衣紋の美しさ。
翻波式衣紋とはまた違ったひねるように流れ交互に刺す衣紋はなにか独特の味わいを感じさせてくれます。
この交互に刺す表現の像は唐招提寺にいらっしゃる伝衆宝王菩薩像、伝薬師如来像にも見られる表現ですがこれらの像は鑑真とともに渡来した唐仏師の最新トレンドではなかったのか?
それらと同表現の衣紋を持つ仏像がこの若狭の地にいらっしゃる不思議は凄く興味があります。
中央に伝来した最新の木彫技術を取り入れる繋がりがこの地にはあったのんですかね?
それとも中央へのルートとは別に伝来するルートがこの海の町にはあったのか。
僕が知らないだけで&忘れているだけでこのような表現を持つ仏像は他にもたくさんいらっしゃるのかな?

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そして脇侍の不思議な尊容のあたたかさ。
奈良時代に遡ると言われる像ですがもう独特なお顔です。
奈良時代となると写実的な天平仏を思い起こしますが完全な地方仏でございます。
中央へ出向く機会があり祀られている飛鳥仏を見てきた地方仏師がその尊容を思い出しつつも独自の匂いを閉じ込めたような深い味わいと癖のある仏像です。
威厳さよりも親身さが伝わってくるような民衆に溶け込んでくるような、そんな仏像です。
貴族のために作られた中央仏と民衆に降りてきている地方仏の違いでしょうか。

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同じく中央に展示されている四天王像もユーモアな雰囲気をだした像です。
異形とも思えるようなやや人離れした尊容で獣人のような雰囲気を持ちます。
憤怒相を表現するのに人の怒りの表情よりも獣の、狼の表情をイメージしたかのような尊容のように僕には思えました。
そして太い!大仰!極端にデフォルメしたようなポージングに乗っかる頭部の小ささのアンバランスさがどこか滑稽でその異形さに拍車をかけます。
昔は候補で彩色した目は好きではなかったんですが、これもなかなか味わい深いものに思えてきました。
地方古仏はこうでなければ!民衆によって素人臭さの補修が常になされ信仰の厚さを感じさせてくれますよね(笑)

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他にも仏像は目白押し。
山形 慈恩寺像の模刻のような江戸期の十二神将像や平安後期の3体の阿弥陀如来坐像。
昨年の秘仏廻りで出会った竜前区の金銅薬師如来立像。
地方臭さが充満したような濃い、濃いぃ~空間がそこにはありましたよ。
いやぁ~素晴らしかった!

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京都府 ・ 雨宝院「天平仏を思わせる京都の千手観音」

壬生寺でようやく仏像を拝観したという満足感を得て次に向かうは雨宝院。
噂には素晴らしい千手観音菩薩がいらっしゃると聞いていたのでテンションかなりの状況で向かう。
果たしてどのような千手観音菩薩がいらっしゃるのか?良く拝観出来るのか?

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予約していた13時にお寺へ訪れ拝観の旨を伝えると非常に優しく温かい印象を与えて下さるご住職がお堂へ迎え入れてくださる。
その前に御朱印をお願いし待っている間に絵葉書を見つけ早くも千手観音菩薩の尊容を捉え興奮する。
「うわぁ~めっちゃええお顔したはるわ!乾漆像みたいな感じやなぁ奈良仏みたいや」
と、絵葉書を見ながら感想を述べると「仏像はよく見て回りはるんですか?仏像の説明はお堂でさせて頂きますね( ̄ー ̄)」とご住職も何やら楽しげ(笑)
素晴らしい御朱印を頂きいよいよお堂へ千手観音菩薩とのご対面です。

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お堂いっぱいにその存在感を溢れさす量感たっぷりの千手観音がそこにはいらっしゃいました。
圧倒的な迫力に息を飲む思い。
一木造りとのことで流石は一木だと納得せざるを得ない量感を感じます。
お顔の雰囲気や裳階の表現、下肢の衣紋表現などは東大寺 不空羂索観音像とよく似た表現ですよね。
そういえば興福寺の仮金堂特別公開で鎌倉期の薬王菩薩&薬上菩薩を拝観した折にも天平の匂いを感じたなぁ。

話を戻す。
四角い輪郭に前方やや下方を睨むような見据えるような視線。
聖林寺の国宝十一面観音菩薩に通じるような尊容です。
聖林寺よりは尊容は穏やかですが非常によく似ているとの印象を受ける。
天平期の乾漆像ではなく平安期の一木像ではありますが非常に良く似ている。
きっと天平の仏像を手本とした奈良仏師の作ではないだろうかと思います。
凛とした仏像を彫る院派円派が幅を聞かせつつある京都においてどこか泥臭さのあるというか垢抜けない(全て最高の褒め言葉)を持った素晴らしい千手観音菩薩です。

正面から眺める分にはややずんぐりとした印象程度なスタイルが横からの拝観で一変します。
そう!この雨宝院さんは間近も間近で拝観できるのです!しかもにじり寄るように横から、更には覗き込むように裏手をも見させて頂けます。
横手から望むその太さは「極」の冠を与えなければいけないほどの極太!
腹周りの量感は特筆すべき太さで物凄いものがあります。
頭体は一木造りでありながら裳階等の装飾物は乾漆を盛り合わせた造形だそうでその太さの所以、天平仏と似た雰囲気を感じる意味が分かったような気がします。

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文化財指定的には国王指定でしたが見直しで重要文化財に。いわゆる旧国宝。
脇手の損失や仏師が判別できないことから重文止まりだとか。
いやいや!これは国宝仏でしょ!?
脇手を失うもいささかもバランスは崩れてないし十分美しいよ。
千手観音菩薩やから脇手が無いのは意味をなさないとかの判定なのかな?
ん~~~~~~~~~~~~~~~
これほどの素晴らしい仏像やのになぁ。。。

この日も心の底からグッッとくる方と出会えた。
生涯を通して何度でも何度でも訪れることになるであろう仏像との出会いは生きる喜びを僕に与えてくださいます。




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雨宝院
京都市上京区智恵光院通上立売上る聖天町9-3
TEL : 075-441-8678












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プロフィール

迦楼馬-カルマ-

Author:迦楼馬-カルマ-
仏像の美しさに感動して以来、ひたすらに仏像拝観に明け暮れる四十路街道を走る男の拝観日記。
仏像拝観歴は非常に浅いので間違いも多々あり!日々精進でございます。
僕自身が見て感じた仏像観を記していますので美術史的、仏教学的に誤っていることが多々あると思ので、その時はご教授ください。



訪れた寺社の全てを記事にするととても追いつかないので佛旅速報でまかない本編記事はピックアップという形になっていきます。

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