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静岡県・金龍院「穏やかな千手観音!力強い不動明王!2体の平安仏の巻き」

願成就院から車を30分ほど走らせ、到着したのは金龍院。
かんなみ仏の里美術館、願成就院と鎌倉時代の慶派仏を見た後に、次にお会いしたのは平安仏。
こちらには県の文化財に指定された千手観音立像と不動明王坐像がいらっしゃいます。
伊豆市の文化財課HPによると、元々は瀧原寺というお寺のご本尊だったそうで、明治時代の廃仏毀釈でお寺は廃寺となりこちらに移されたそうです。


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早速本堂へ上げていただき、右奥に客仏として安置されている2体の仏像と対面。
千手観音菩薩立像はお厨子に、不動明王坐像はそのお厨子横にいらっしゃいました。


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ヒノキ材の一木造りで内刳りを施さず、足元には渦紋が見られるなど平安の古式の像で像高は90.5cm。
思っていたよりも小さな観音様で素朴で穏やかなお顔の方。
温かさを感じさせてくださる素晴らしい地方仏。
放射状に延びていく腕、引き締まった腰周りとスタイル良くて美しいです。
頭をぐるりと囲む下を向いた化仏は独特でへぇ~っと注目してしまう面白さ。
この変わった化仏の配置がより一層に尊容の穏やかさというか可愛らしさを増幅させて見るものの心に飛び込んでくるようでした。


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千手観音菩薩立像 平安時代 ヒノキ材 一木造り 像高90.5cm 県指定文化財

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隣りに安置される不動明王坐像もヒノキ材の一木造りで内刳りは施さない。
像高は70.2cm、目は大きく見開き肩を張って大きく剣と羂索とる腕など本当に力強い不動明王像です。
太い太い眉毛があるようなお顔で、大きな目、大きな鼻、大きな口と大きなパーツがどんっと集まった味わい深いイイお顔です。
内刳りは施されていないとの事でしたが、腹部には内部を覗くためのような切り口が。
内部調査があった際に切り取られたのかな?こんな開け方はしない気もするが。。


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不動明王坐像 平安時代 ヒノキ材 一木造り 像高70.2cm 県指定文化財

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温かく力強く魅力的な平安仏を楽しみ本日の仏像拝観は締めくくり。
前日の仏像ツアーから帰路へ着きつつの静岡見仏。
非常に充実したお腹いっぱいな二日間でした!





金龍院
静岡県伊豆市大平763
TEL : 0558-72-2213
拝観 : 要予約
拝観料 : 志納
駐車場 : 有り









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静岡県・願成就院「運慶の空間の巻き」

かんなみ仏の里美術館で大幅に時間を費やし、慌てて次の目的地へ。

願成就院。
言わずと知れた国宝仏・運慶作の仏像を安置するお寺です。
ひっそりと佇む境内に少し戸惑う。
国宝仏が安置され、しかもそれは運慶の作である。
奈良、京都といった仏教観光地ではないにしても、この静けさなんだ。
しかしそれは、運慶仏としっかりと向き合うことが出来る至福の時間を与えてくれました。


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拝観受付を済ませ、早速堂内へと進む。
扉を開けた瞬間にもう思わず「おぉ~~っ!」感嘆の声をあげてしまいます。
写真では何度も見てきたあの運慶仏が目の前に美しく凛々しく厳しく現れるのですからたまったもんじゃありません。
遠目に見ても迫力が凄い。
どの像もパンパンにはち切れんばかりの量感で圧倒的でした。
大横綱、千代の富士や朝青龍の様なとてつもない筋量の上に薄っすらと肉を乗せた、そんな見事な量感。


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阿弥陀如来坐像の胸前で組む印相が破損してしまっているのは残念なのですが、何故かそこに美しさを感じてしまうのは日本人だからでしょうか。
衣文表現は平安後期の整然と美しく流れる表現とは全く違った、松の枝のように分かれて広がり複雑に絡み合うように刻まれます。
もうどこから見ても力強さが物凄くて、完全に男性的な空気を身にまとわれた阿弥陀様。


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阿弥陀如来坐像 鎌倉時代 運慶作 寄木造り 彫眼 像高143.5cm 国宝


非常に理知的で精悍な顔つきをされた毘沙門天立像。
顔の骨格、肉付き、視線、どれもが圧巻で生きているように思えてなりません。
完璧に役作りをしてきた役者さんが実際の甲冑を身にまとって立たれているような生きてる感、存在感が溢れ出てて見ているうちに迫力に飲み込まれていきます。
甲冑の下に眠る、パンパンにあふれた筋肉の肉感が甲冑越しに伝わる見事さで、戦国武将に愛されたいうのも分かるくらいの武将っぷり。
これほどの生命力は他の彫刻ではまず見れないんじゃないかな。


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毘沙門天立像   鎌倉時代 運慶作 寄木造り 玉眼 像高147cm  国宝



そして不動三尊なわけですよ。
完全に煩悩を焼き切り断ち切ってくれること間違いなしの大迫力の憤怒相で睨みを利かせています。
露出した肌からは毘沙門天にも負けない迫力の筋量を感じる。
筋肉の筋や陰影が付くように肉の盛り上がりなどが彫り込まれている訳ではないのに。
腕や胸、腹と体型はどちらかというと丸みを帯びてく彫られているのにだらしない体型ではなく、物凄い力強さを感じさせるのは姿勢と張りから感じるのか。
木彫だとは思えないような張りが素晴らしい肉感美と、これぞ忿怒相と言うべき怒りの表情と合わさって猛烈な恐ろしさ。
そんな恐ろしさもここまで突き抜けてくると めちゃくちゃ美しく見えるんだから不思議です。


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不動明王立像  鎌倉時代 運慶作 寄木造り 玉眼 像高136.5cm 国宝



制吒迦童子と矜羯羅童子の脇侍の対照的なたたずまいは面白い。
のんびりと穏やかにぼーっとしているような矜羯羅童子は少女なのか美少年なのか中世的な雰囲気をまとわれています。
不動明王と同じく丸みを帯びた体つきなんですが、こちらは柔らかさを感じるのです。
プニプニとした肉感で、触ってもいないのに触って知っているような気さえしてくるんだからそれ程リアルだという事なんだろうな。
それに引き換え制吒迦童子の腕白ぶり。
矜羯羅童子にはない力強さがあって動きも豊かで見ていて面白い。
運慶は全てに意味を持たせているのかな。
腕白さを表すのに肩を怒らせ、膝を伸ばしてしっかりと踏みしめた立ち姿に衣の裾を膝までまくりあげる。
衣文の彫り方までも腕白さが表れる様に決めているように感じます。
矜羯羅童子のなで肩、指のふくよかさ、風になびかずストンと落ちた衣は幼さや少女っぽさを感じさせるのに見事な表現だと思います。



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矜羯羅童子像  鎌倉時代 運慶作 寄木造り 玉眼 像高78cm  国宝

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制吒迦童子像  鎌倉時代 運慶作 寄木造り 玉眼 像高82.6cm 国宝




仏像の前を何度も往復し、近づいて見たり離れて見たりとここでも予定をかなりオーバーして滞在してしまいました。
5体もの運慶仏を堪能し、また来よう、また来ようと鼻息荒くブツブツつぶやき次の目的地へと向かうのでした。



       






天守君山 願成就院(がんじょうじゅいん)
静岡県伊豆の国市寺家83-1
TEL : 055-949-7676
拝観 : 9:00~16:00(火・水定休)
拝観料 : 400円
駐車場 : 有り







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迦楼馬-カルマ-

Author:迦楼馬-カルマ-
仏像の美しさに感動して以来、ひたすらに仏像拝観に明け暮れる四十路街道を走る男の拝観日記。
仏像拝観歴は非常に浅いので間違いも多々あり!日々精進でございます。
僕自身が見て感じた仏像観を記していますので美術史的、仏教学的に誤っていることが多々あると思ので、その時はご教授ください。



訪れた寺社の全てを記事にするととても追いつかないので佛旅速報でまかない本編記事はピックアップという形になっていきます。

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