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神奈川県・弘明寺「幼さと尊さが同居する鉈彫り十一面観音の巻き」

7月14日。
2日間に渡った仏像LINKツアーを終え(最終の仙台市博物館は更新済み)開けて14日、この日は関西への帰り道に1ヶ寺だけ寄り道を。
訪れたのは神奈川県 弘明寺。


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非常に力強い仁王像P1090106.jpg

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西川きよしでございますぅ~


鉈彫りで有名な十一面観音菩薩像をご本尊とする真言宗寺院です。
聖武天皇より天下泰平祈願の勅願を奉じ、全国を巡った行基菩薩がこの地で一刀三礼の至誠を尽くして彫刻祈願されたと伝わる十一面観音菩薩像。
多くの仏像写真集や書籍等でお姿を知るたびに、いつかいつかとお会いできる機会を待ち望んでいた方です。


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鉈彫り仏とは、仏像の表面にノミの跡を残した特殊な像で漆箔等は施されず木肌があらわとなっております。
仏像の造像過程である荒彫りの段階で止まってしまった「未完成品」と考えられる事もあったそうですが、現在では日本古来からある樹への信仰、いわゆる神木・霊木と呼ばれる木々より彫りだされ、霊木より現れ出でる姿を表現していると考えられているそうです。


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早速 拝観の受け付けをしていただき内陣へ。
お厨子の真ん前でお姿を拝観させて頂き、その鉈彫り像のノミ跡をじっと見させて頂きました。
頭部から胸、腕、足と規則正しく横線を引くようにノミの跡が。
大きめの頭部にニッコリと微笑んだ表情に幼子のような純朴さを感じ、樹木である事の温かさをノミ跡の表現から如実に感じることが出来ます。
像高は181.7cmの一木造り。
やはり霊木より彫りだされたのであろう、姿勢はやや右へと傾いています。
歩き出そうとしているような姿にも見えますが、そのように造形したというよりは やはり霊木の形状ゆえの姿勢なんだろうなと思いました。
幼く可愛らしいと感じる像でありながら全身から見て取れるノミ跡により神聖な気高さも持ち合わせた見事な十一面観音像でした。


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藤森武 「日本の観音像」より






瑞鷹山 弘明寺(ぐみょうじ)
神奈川県横浜市南区弘明寺町267
TEL : 045-711-1231
拝観 : 8:00~17:00
拝観料 : 500円
駐車場 : 有り







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神奈川県・龍華寺「力強き大日如来!笑みの大黒!美しき地蔵菩薩!の巻き」

金沢文庫を後にし、昼食後の集合場所は君ヶ崎稲荷神社。
国道沿いにひっそりとたたずむ神社で、国道側には無縁供養塔と石仏群。
境内に座り込みボーっと景色を見るともなく見ているとなんだか気持ちがいい。

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集合時間になり民族大移動で龍華寺へ。
境内は牡丹祭り?で賑わい多くの人出でした。
龍華寺では特別公開されているご本尊 大日如来像に加えて、当ツアーの為に特別に公開して下さっている三面大黒天と地蔵堂の地蔵菩薩坐像を拝観させて頂きました。

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本堂内陣奥に蝋燭ゆらめく灯りで照らし出された密の雰囲気が溢れ出す鎌倉期の大日如来像がいらっしゃいます。
力強い唇と見据える瞳は男性的で、胸の前 高くに結んだ智拳印が蝋燭の灯りにゆらめき非常に雰囲気を醸し出します。
くすんだ金の色が薄暗い堂内の中に浮かび上がっていました。

そして外陣からの真ん前にはお厨子にいらっしゃる三面大黒天。
三面というよりは肩口に弁財天と毘沙門天の頭をのせているようなお姿で正面のお顔は非常に優しい微笑んでいるようなお顔でした。
僕の下手くそな写真では全く分からないんですが目がへの字に垂れるくらいの好々爺って感じでしたよ。

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この2体の仏像を拝観させて頂いただけでも満足だったのですが、地蔵堂で地蔵菩薩が拝観出来ますよと。
見逃さないでと主催者様から教えて頂き慌てて地蔵堂へ。
涼しげな瞳で下方を見つめる美しい地蔵菩薩坐像がいらっしゃいました。
ハラハラとはためく衣に見つめる瞳は非常に美しくため息が出ます。
下方を深く見つめる瞳にクラクラしながら夢中で拝ませて頂きました。

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知足山 龍華寺
神奈川県横浜市金沢区洲崎町9-31
TEL : 045-701-6705






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神奈川県・影向寺「収蔵庫にひしめく薬師の世界の巻き」

1寺目の能満寺から凄い仏を見た。。。これは凄いツアーになるぞ?!との興奮に包まれその勢いのまま向かったのは徒歩で直ぐの影向寺。
軽々と歩いて向かいます、むしろスキップするぞってな勢いで。
夕暮れ時にはゾンビのようになるとは想像すらせずに。。。

影向寺。
奈良時代の天平12年(740)、聖武天皇の命を受けた行基菩薩によって開創されたと伝えられていますが、近年の発掘調査により、創建の年代は白凰時代にまで遡ることが明らかになったそうです。

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まずは本堂へ上げて頂きご住職からの法話を頂きます。
何はともあれ「極楽は西にありといえども東にも 来た道探せ 皆身にぞある」なわけですよ。

そして格子戸越しに見える薬師如来坐像。
なかなかのイケメンです。
じっくり見ようと思っていたところでご住職の法話が始まり見れなかったのですがお目当ての薬師如来はこの方ではなかった!
収蔵庫にいらっしゃるとの事で移動を開始します。
ご住職のお話にあったお薬師様の背中に海を感じることが出来るのか?!
でも本堂にいらっしゃる薬師如来も良仏だったなぁ、あまりじっくりとは見れなかったけど。

向かった収蔵庫は通常の公開時期でも中には入れずガラス越しでの拝観となるそうですが、今回の秘仏ツアーでは特別に中へ入れて頂き、収蔵庫内をぐるりと巡らせて頂くことが出来ました。
しかも写真撮影の許可まで戴き今秘仏ツアーの特別さを味わう。

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収蔵庫には仏像がビッシリ!
ご本尊薬師如来坐像に脇侍の日光月光菩薩に十二神将像。
藤原期の定朝様を見せる穏やかな薬師如来の優しさ。
木肌があらわになり木目の浮かんだ面相からはなんとも素朴さを感じ、僕の方も優しい笑みを浮かべて眺めてしまいます。
柔らかく流れていく衣文も素敵で背中を母なる海と感じた拝観者がいたというご住職の話も頷けます。
いや、僕は背中見たときは山だと思ったんですけどね(笑)


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脇侍の日光月光両菩薩像もご本尊とよく似たお顔をされています。
柔和な笑みを浮かべたような優しさに、平安後期の浅い衣文造りがその優しさをさらに際立たせているようです。
肩幅・二の腕はしっかりとしながらスーっと直立されたお姿。

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また、さらにその脇を固めるのが二天像。
動きは固く目を大きく彫りだされた非常に動物的な印象を受けた二天像。
しかし腰に据えた指にしなやかさを感じ固い中の柔らかさにうっとりする。
動きの硬い二天像に対し、躍動感がたまらない邪鬼像。
邪鬼の愛らしさ躍動感にザワつく仏像好きの面々(笑)
足良かったなぁ。
なかなかの演技派でしたねあの邪鬼はw


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そしてその後ろを守っている十二神将像。
造像の時代は南北朝と若くなりますが非常に表情が豊かで素晴らしい。
カッコイイというよりも。
切なさを感じたんですよね。
凛々しく遠くを見つめる像、グッと睨みを利かせる像、明らかに寂しさを見せる像などそれぞれの表情を見せるのですがなんだか哀愁の様なものを感じましたねぇ。
玉眼の潤んだ瞳からその様な印象を受けたのかもしれません。
もうめちゃくちゃメロメロになっちゃったなぁ。
本当に表情が素敵な十二神将像でした。


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大満足の収蔵庫を後にしご住職の営業トークにまんまと乗っかり寺院のパンフを購入します。
通常2000円が特別に1000円ですよ!買っちゃいましたね。
本当ならここで次の目的地へ移動だったのかな?
しかし、そのパンフで十王像が載っているのを見た方が、十王像がどこにいらっしゃるのかご住職に確認されたのです。
すると特別に安置されているお堂を開けて下さると。
時間が押しているんですが慌てて拝観させて頂きました。
江戸時代の像でこちらも素晴らしい。
そして同仏師作かと思われる奪衣婆の迫力!
本当なら見ることがなかった素晴らしい仏像との縁を頂けて本当にありがとうございました。
いやぁ~良かった。


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威徳山 影向寺(ようごうじ)
神奈川県川崎市宮前区野川419
TEL : 044-766-7932









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神奈川県・能満寺「12年に1度の聖観音菩薩像の巻き」

4月の19日、仏像部として数々の企画を運営されているyo_kkunさんプロデュースによる「春の秘仏ツアー」へと出かけて参りました。
初めての関東方面への仏像拝観である事、普段はなかなか拝観するのが難しい仏像を拝観出来る事に加え、自身が仏像を拝観するにあたり常に参考にさせて頂いたブロガーさん達をはじめ、たくさんの仏像好きな方々と知り合える素晴らしい機会に胸躍らせて参加させて頂きました。

この場を借りてもう一度お礼を言いたいと思います。
総勢が74名という通常であればツアー会社の大型企画クラスの秘仏ツアーを企画運営して下さったyo_kkunさん、班長を務めて下さった方々、本当にありがとうございました。
10名から20名で1班を形成して班行動での拝観という動きの中で行われたこの企画。
yo_kkunさんはじめ、それぞれの班を率いて行動して下さった班長さん、表には出ていない苦労は当然あったことと思います。
本当に楽しくて有意義な幸せな時間となりました。
心より感謝しております。
ありがとうございました!



さて、集合場所にて班分けが行われ(事前に班名は知らされていました)そぞれの自己紹介。
結構人見知りな僕はひどく緊張していました(笑)
しかし周りはみんな仏像好きなんだという仲間意識がそんな緊張を和らげてくれました。
この日一日を共に行動して下さった皆さんありがとうございました。
そしてまず向かったのは神奈川県川崎市にある能満寺。

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能満寺は天台宗の寺院で、もともとは影向寺の塔頭十二坊(薬師さまを守る十二神の一体づつを祀った脇侍)のひとつとして行基菩薩が創建したと伝わっています。
天文年間にこの地に移り快賢が開闢、観空が中興したといわれまています。

今回 能満寺を訪れたのは12年に1度のご開帳となる聖観音菩薩像を拝観させて頂くため。
本堂のやや奥に開扉されたお厨子が安置されています。
像高は101.3cmでカヤ材の一木造り。市重要歴史記念物。

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非常に肉感的で肩幅の広い逞しい方で、表情も凛々しくて鎌倉期を思わせるお顔の男性的な聖観音像でした。
足元のU字に太く彫られた衣文も合わせて平安初期を感じさせて下さる方なんですが、お顔とのバランスが悪くどこか不安定な印象を受けます。
背面に朱漆による銘文が記されており、それによるとこの聖観音菩薩像が本像がもとは岩川村 長命寺観音堂の本尊であったことや、江戸時代(1674)に修理されたことが分かるそうです。
このアンバランスなお顔は後世の修復により玉眼が嵌め込まれ、その際に作り直しが行われているとか。
この為、アンバランスなどこか姿勢の悪い様相となってしまっています。
しかし、その堂々としたたたずまいはなお素晴らしく見応えタップリでした。


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雨が降るかもしれないと予報されていたのになんのその。
見事に晴れた境内は秘仏公開を楽しむ人で賑わって大満足の1寺目。
総勢74名 本当に拝観出来るのか?!と不安ではありましたが、そんな不安を見事に吹き飛ばす滑り出しでした!


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星王山寶蔵院 能満寺(のうまんじ)
神奈川県川崎市高津区千年354
TEL : 044-766-0009











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プロフィール

迦楼馬-カルマ-

Author:迦楼馬-カルマ-
仏像の美しさに感動して以来、ひたすらに仏像拝観に明け暮れる四十路街道を走る男の拝観日記。
仏像拝観歴は非常に浅いので間違いも多々あり!日々精進でございます。
僕自身が見て感じた仏像観を記していますので美術史的、仏教学的に誤っていることが多々あると思ので、その時はご教授ください。



訪れた寺社の全てを記事にするととても追いつかないので佛旅速報でまかない本編記事はピックアップという形になっていきます。

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